2023年6月定例議会 7月10日最終日【反対討論述べる】

請願4号「マイナンバーカードの性急・拙速な運用拡大を行わないことを求める意見書の提出について」不採択とする委員長報告に対する【反対討論】

 県政クラブを代表いたしまして、ただ今議題になっております、「マイナンバーカードの性急・拙速な運用拡大を行わないことを求める意見書の提出について」提出された請願4号は、極めて願意妥当とする立場から、これを不採択とする総務常任委員長報告に反対の立場から討論申し上げます。

 まず、本請願におきましては、マイナンバー制度そのものに反対するものではないということを、改めて申し上げておきます。その上で、現時点でもトラブルが後を絶たない状況にある中で、2024年秋には現行の健康保険証を原則廃止、また年金預貯金口座をひもづける制度をつくることも盛り込まれているのであります。

 相次ぐトラブルは、個人情報保護法に基づき、そのことを最も尊重しなければならない、政府行政においてのトラブルであります。請願にも記されておりますが、国税庁が今年2月にデジタル庁に伝えたにもかかわらず、放置するデジタル庁の体質改善から始めるべきだと申し上げたい。

 つい先日の地方紙記事で、登録事務を担う自治体などの態勢が整わないのに普及を急いだこと、カード普及を優先するあまり、現場の事務作業過程でのミス防止策がおろそかになったのではないかと指摘しています。国民、県民の利便性を向上させる基盤であるとした上で、国民、県民誰もが納得するものでなければならないし、運用当初からつまづきなど許されなかったとしています。ましてや、その総点検作業を最も担わなければならないのは地方自治体なのであります。岸田政権政府は、今ここで一度誤った進め方を反省し、国民に安心と、信頼を求めるために、しっかりと説明をする時なのです。

 以上の点を踏まえ、請願4号は採択すべきものであり、不採択とする総務常任委員長の報告には、強く憤りを覚えるものであります。山形県民にとって、日本国民にとって、社会保障制度の根幹にかかわる内容を含む極めて重要な請願であり、これを不採択にするなど言語道断と言わざるを得ないことを付して、反対討論と致します。 

2023年6月26日 6月定例議会《代表質問》

 県政クラブの石黒覚でございます。

 県民皆様の安全安心な日常生活を守り、次の世代が誇りをもって引き継ぐことができる、平和で安心・安全な山形県づくりに、微力を尽くしてまいる所存でございます。

 ロシアによるウクライナ侵攻から1年4ヵ月が経過いたしました。去る6月12日に「ウクライナへ使い捨てカイロを送る会」が全国から寄せられた使い捨てカイロ295,000個が山形市から出発しました。今年1月と2月に送られた分と合わせて、365,000個が送られたことになります。12年前に福島第一原発事故により、米沢市に避難され11年間本県で避難生活をされた、元高校教師の武田徹先生が、本県での避難生活でご自身が受けた温かい支援に感謝する気持ちから、何か恩返しができないかと考えた末にウクライナ国民にほんの少しでも温かさを届けたいとはじめられ、NHK全国ニュースでも取り上げられ、支援の輪がここまで大きくなったものでございます。福島の方々や山形県平和センターの仲間の皆様、そして、本県河北町出身の吉田はるみ衆議院議員のお力添えで、輸送を引き受けて下さった第一貨物、郵船ロジスティックスなどの皆様の力が一つになって、使い捨てカイロという小さな温かさが、大きな心を温める支援になったものと、改めて関係各位に敬意を申し上げる次第でございます。

 ロシアによるウクライナ侵略戦争をはじめ、各地の紛争や内乱が1日も早く終結することを願いながら質問に入らせて頂きます。

【質  問】

1 コロナ後の県づくりについて

 約3年半前の2019年12月に中国武漢で発症したとされる新型コロナウイルス感染症は、今を生きる私たち人類にとって極めて多くの教訓を残しました。我が国におきましては、去る5月8日から感染症法上の5類に位置付けられ、完全収束とは言えないまでも、私たちの日常生活も急速にコロナ前に戻りつつあります。

 残るデータをみますと、厚生労働省の発表によれば、3月10日時点で、世界198か国で6億7,492万7,337人感染、死者679万9,438人に達しています。我が国におきましては、5月8日までの感染者数が3,380万2,739人を数え、死亡者数は7万4,669人。そして本県におきましては、感染者数が23万1,254人となり、死亡者数が370人となっています。

 今年3月13日からは、マスクの着用は個人の判断に任せることとなりました。子供たちの笑顔がまっすぐに届く日常を期待致しておりますが、現在でもかなりの率でマスク着用が続いているようであります。

 1年前の昨年6月定例会代表質問において、本県のこれまでの新型コロナウイルス感染症に対する対応は、私は総じて評価できる。吉村知事の県民の皆様方に対する発信力は、不安な日常へ少しでも安心感を届けてきたものと考える。また、医療従事者を中心とする方々への感謝や支援体制の構築、療養施設確保への迅速な対応、さらには経済支援対策の機敏な対応など、日常生活や社会情勢の不安を少しでも取り除くことに最善策を講じてきたものと評価を申し上げました。

 一方で、コロナ禍3年数か月の中で、地域コミュニティの希薄化が進んだことも事実ではないかと考えます。「コロナ禍だから無理して出なくていい」という風潮が、地域行事や祭りの再開、地域での共同作業、ボランティア活動など等の足かせになってはいないのか、少し心配致しているものでございます。

 吉村知事におかれましては、「コロナ克服・山形経済再生」を掲げ、まさにその実現に向けて「令和5年度県政運営の基本的考え方」並びに「新型コロナをはじめとする社会の変化を受けた今後の施策展開」に表しておられます。先日はインバウンド復活・県産農産物輸出復活を目指して台湾にトップセールス。また東京・大阪での「やまがた紅王」本格デビューのトップセールスと、そのエネルギッシュなお姿は、県民皆様方に大きな元気と勇気を与えているものと評価致します。そこで、「コロナ後の県づくりについて」吉村美栄子知事のめざす方向についてお伺い致したいと存じます。

【吉村知事答弁】

 新型コロナの感染拡大防止のための「新しい生活様式」への転換や国内外における移動の制限などにより、観光業をはじめ、飲食業や地域交通などで深刻な影響を受けるなど、新型コロナは、私たちの日常の暮らしや企業の経済活動、地域社会の有り様に至る様々な面で、大きな影響や変化をもたらしました。

 他方、「非接触・非対面」というコロナ禍での行動規範は、ライフスタイルを劇的に変化させ、キャッシュレス決済やテレワークが普及するなど、急速かつ強制的に社会全体のデジタル化が進んだところであります。

 さらには、時間や場所にとらわれない自由な働き方の拡大に伴って、暮らしの質を重視する考えが広まるとともに、若者を中心に地方移住への関心や、環境問題に対する意識が高まりを見せるなど、価値観の多様化も進みました。

 こうしたコロナ禍による影響や変化に対し、目の前の対応として、疲弊した地域経済の早期回復に取り組みつつ、コロナ後の時代の転換の先を見据えた未来志向の県づくりを力強く進めてまいりたいと考えております。

 まず、地域経済の早期回復につきましては、観光の復活に取り組み、国内外の観光需要をいち早く本県に取り込んでまいります。観光は地域の様々な産業との結びつきが強く裾野の広い産業でありますので、社会経済活動が本格的に再始動しつつある今こそ、官民が連携して、交流人口の拡大を図っていくことで、飲食店や交通事業者などへも経済効果を波及させ、地域の賑わいや活力の向上に結びつけてまいりたいと考えております。

 コロナ後の未来を見据えた県づくりに向けましては、デジタルやグリーンなど、本県の新たな成長に繋がる技術を積極的に取り込み、国内外の活力を呼び込みながら、持続可能な山形県を創っていくことが重要であります。対話型人工知能「チャットGPT」に見られるように、デジタル技術は目覚ましいスピードで進歩しております。本県でも変化の先を見据えながら、暮らしの質の向上や産業振興のためにDXを推進するとともに、カーボンニュートラルの実現に向けた流れを経済発展へと結びつけるGXにも積極的に取り組んでまいります。

 変化の激しい時代にありましても、いえ、そういう時代であるからこそ、県民の皆様が本県で安心して暮らし、幸せを実感できる県づくりが重要であります。このため、医療・福祉の充実や、デジタル技術も活用した生活サービスの利便性向上を図っていくとともに、近年、激甚・頻発化する自然災害に強い強靭な県土づくりにハード・ソフト両面から取り組んでまいります。

 そうした暮らしの安心安全を土台に、誰もが個性や能力を発揮できる地域社会の実現に向けて、誰一人取り残さない包摂性や、多様な価値観を認め合う寛容性を高めていくとともに、本県の将来を担う若者の県内定着・回帰や子育て世代等の移住、さらには留学生を含む外国人材の受入れ拡大に向けて、美しい自然環境や子育て環境、高い精神性に基づく文化など、多くの人々を惹き付ける本県の魅力をさらに磨き上げ、発信を強化してまいります。

 先人たちが様々な困難を乗り越えてきてくれたからこそ、現在の私たちの生活があります。私たちも未来に向けて、市町村、事業者・団体、県議会、そして県民の皆様と一緒になって常に前向きなチャレンジを続けることで、真の豊かさと幸せに満ち、輝き続ける山形県の実現を目指してまいります。

【質  問】

2 本県産業における企業支援の方向性と今後のあり方について

 次に、本県産業における企業支援の方向性と今後のあり方についてお伺い致します。

 新型コロナウイルス感染症を契機として、本県産業を取り巻く状況は、県民の消費行動や市場ニーズが大きく変化しているとともに、DXやGXといった社会経済の大きな変化が加速致しております。

 それに加えて、人手不足や資源価格の高騰などの影響もあることから、県内の中小企業・小規模事業者は今、将来への生き残りをかけた道のりの『岐路』に立っているものと、認識しております。

 実際に県内企業の経営者の皆様のお話を伺うと、「DXやリスキリングなどの変化へどのように対応していけばいいか分からない」、「原材料等の価格高騰を価格転嫁していく判断が難しい」「消費者の流れが大きく変わり、選ばれる商品と選ばれない商品が明確になっている」など、状況の変化やこれからの対応について悩んでいるというお話など、様々な切実な声が届いて参ります。

 一方で、「新しい時代の変化に対応していかなければ、企業として生き残っていけない」という強い危機感を抱き、企業自らを変えていこうとする経営者も、もちろん、県内各地にいらっしゃいます。

 しかしながら、そうした前向きな経営者であったとしても、中小企業・小規模事業者にとっては資金も人材もノウハウも不足しているわけでございますので、様々な変化に対応していくうえで、何から手を付けていいのか分からない中で、一歩踏み出すことに躊躇してしまうケースもあるのではないかと思われます。

 イギリスの自然科学者、チャールズ・ダーウィンは、「生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである。」と言っております。

 変化の激しい困難な時代である今、本県の中小企業・小規模事業者が今後も生き残っていくためには、大胆かつスピーディに変化に対応していくことが必要であると考えます。

 そこで、県として、これからの企業支援の方向性をどのように考えているのか、そして、どのように実現していくのか、産業振興の道に長年携わってこられました平山副知事へお考えをお伺い致したいと存じます。

【平山副知事答弁】

 今、デジタル社会が進展してきている中で、コロナ禍も相まって、社会経済の大きな変革期を迎えております。こうした中、本県産業が将来に向けて発展していくためには、県内企業の大宗を占める中小企業・小規模事業者の成長・発展が不可欠であると認識しております。

 県内中小企業・小規模事業者の経営者の方々からお話を伺いますと、強い成長意欲を持ち、国内外のマーケットで戦い結果を出している企業がある一方、ポテンシャルも意欲もあるものの、何から取り組んでよいのか分からない、最初の一歩を踏み出せないという企業がたくさん存在すること、また、下請体質にある現状への強い危機感や、原材料価格等の高騰が続く中で、価格決定力の獲得が必要だという思いを強くお持ちである、と受け止めているところであります。

 これら中小企業・小規模事業者が生き残り、更に成長・発展していくためには「戦略性を持った経営」や「新しい事業や領域への挑戦」、そして、それらを実践する「ひとづくり」に積極的に取り組む必要があります。しかしながら、中小企業・小規模事業者は経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報)が不十分であり、多種多様な経営課題を抱えている状況であります。こうした課題に対応するためには、県内企業の取組みを強力に推進する体制の再構築が急務であり、この度、来年の春をめどに、経営力強化を支援する「(公財)山形県企業振興公社」と新技術・新製品開発を支援する「(公財)山形県産業技術振興機構」を再編・統合していきたいと考えております。

 この産業支援機関の再編によって、支援機能の集約化と質的向上を図り、多様な経営課題に対する「一元的かつ迅速な支援」を行えるように取り組んでまいりたいと考えております。

 新たな組織では、経営戦略の構築から人的資源の確保、新商品の開発や新たな販路開拓といった一連の企業活動全体に対し、必要とされる最適な支援を、スピード感を持って提供することを目指します。加えて、産業の新しい活力として期待できる創業を目指す人に対しても、その段階やニーズに応じたサポートを提供していきたいと考えております。

 さらに、地域で身近な相談機関である商工会議所・商工会や、技術支援を行う工業技術センターなどの他の産業支援機関との連携を一層強化することで、県内の産業支援機関が一体となった企業支援体制へと再構築してまいります。

 県としましては、県内の中小企業・小規模事業者が確固たる経営基盤を築き、下請け体質から脱却し、新たなビジネスに次々とチャレンジすることで、社会変革や困難を乗り越えていけるよう、支援体制の再構築を進めながら、ありとあらゆる経営課題に対して関係機関が協調して対応することで、本県産業の持続的な発展につなげてまいりたいと考えております。

【質  問】

3 次代を担う人づくりについて

 (1)  東北公益文科大学の公立化の具体的工程について

 次に、次代を担う人づくりについて、はじめに東北公益文科大学の公立化の具体的工程についてお伺い致したいと存じます。

 東北公益文科大学の公立化と機能強化について、昨年2月定例会予算特別委員会の私の質問に対して、実務担当者よりも高いレベルでの議論を行い、公立化と機能強化に係る方向性をまとめるとの吉村知事よりご答弁を頂戴致しました。

 令和5年3月に県と2市3町で公立化と機能強化についてとりまとめられた報告書が作成されました。さらに機能強化については本年2月から公益大において、県のサポートによります、地元経済界等とも連携したシンポジウムを開催しており、具体的な動きもあらわれ、評価致しているところでございます。こうした動きの中におきまして知事以下県庁執行部のご尽力には、頭の下がる思いでございます。改めて敬意と感謝をお伝え申し上げます。

 一方で、今春の公益大は、役職員上げましての「魅力あるカリキュラムの構築」や「学生の自由な発想による地域活動参加」さらには「きめ細かな就職支援」など等、学生確保に向けた取組みを継続されておりましたが、人口減少の進行はもちろん、コロナの落ち着きから都会志向のゆり戻しがあるのか、誠に残念ではありますが、今年度定員割れが生じる結果となりました。また、全国における公立大学が100校を数えるとの報道があり、今後、なんらかの抑制がなされるのではないかと心配をしているところでございます。 

 そうした中におきまして、東北公益文科大学が進めております、令和7年度の国際コミュニケーション学科設置を目前にする中で、これらに合わせて公立化を進める方向も必要ではないかと考えます。現在進められている再生可能エネルギーや地域の持つポテンシャルを活かす機能強化を進めることは、もちろん必要であることは言うまでもありません。

 6月補正予算において、公立化した際の財政負担のシミュレーションや具体的な公立化及び機能強化策の調査費を計上しているようでございますが、この先、県として山形・庄内の高等教育の在り方をどのように考え、機能強化を検討するのか、公立化について2市3町との合意形成をどのように進めていかれるのか、また、今後の具体的工程・スケジュールについて、吉村知事にお伺い致したいと存じます。

【吉村知事答弁】

 はじめに県内及び庄内の高等教育のあり方についてお答えいたします。県内には(総合大学の)山形大学を始め、県立や私立の4年制大学、短期大学など、様々な高等教育機関が存在しておりますが、庄内地方の4年制大学は山大農学部と公益大のみであり、庄内地方の高等教育において公益大の存在は大きいものと考えております。そもそも公益大については、庄内地域に4年制の大学が必要だという庄内の皆様の強い要望があり、庄内2市3町と県が設置したという経緯があります。

 人口の社会減が進む中、(公益大も含め)県内の高等教育機関がそれぞれ特色を生かし、また、横の結びつきを深めながら相互の交流を促進することにより、質の高い教育や研究を進めていくことが重要であります。

 こうした中、公益大の公立化・機能強化に関して、昨年度は副知事と各首長との議論の場を新設したことも含め、様々なレベルでの意見交換を行ってまいりました。これを踏まえて、本年3月には、県と庄内の2市3町との連名で、「公立化と機能強化に係るとりまとめ」の報告書を作成し、その中で、公立化と財政負担に関するロードマップなどを公表しております。現在、2市3町の間でも、財政負担の割合や機能強化の具体的内容について様々なご意見があることから、公立化の年度を決定するためには、丁寧な合意形成が必要と考えております。このためにも、本定例会でご提案をしている委託調査により、公立化する場合の財政負担の選択肢や様々な機能強化策について詳細な分析を行い、関係者間で共有していきたいと思っております。

 今後のスケジュールについてですが、私はこれまでも、公立化は単なる看板の架け替えではない、ということを申し上げてまいりました。公立化と同時に機能強化を行うことで、人口減少の中でも公益大が地域に存続し続けていくことが可能となるものと考えております。このため、今年2月からは県が主導しながら「地域連携シンポジウム」を開催し、地元の経済団体や金融機関、自治体、県内外の企業等とも協力して機能強化の選択肢や方向性を探っているところです。これまでも、再生可能エネルギーや次世代モビリティをテーマに議論するとともに、先週開催のセッションでは、酒田市内の街歩きや、酒田舞娘も交えた地域愛に溢れる討論など、学生と地域の人々が現場に出て、地域と向き合うことにより、地域の持続可能性を探る有意義な教育機会の提供になったものと評価しています。

 また、本年5月と6月には、県及び2市3町の職員が、グローバルな人材育成で有名な秋田県の国際教養大学と、コンピュータ理工学に特化している福島県の会津大学という2つの先進的な公立大学への現地調査を行いました。今後の機能強化に向けた参考事例として活用してまいりたいと考えております。

 全ての学問は哲学から出発していると言われており、文系と理系についても、現在、様々な分野でその境目が消失しつつあります。その意味で、元来、学際的な領域である公益学に再生可能エネルギーやDXといった社会変化を柔軟に取り込みながら発展させていくことは、公益大の公立化及び機能強化の追い風になるものと考えます。今後とも、調査や議論を深めながら、スピード感をもって関係者間の合意形成を図ってまいります。

【質  問】

 (2)  本県における併設型中高一貫教育の成果と課題について

 次に、次代を担う人づくりについての2点目と致しまして、本県における併設型中高一貫教育の成果と課題についてお伺い致します。

 平成9年6月中央教育審議会の第二次答申の中で、従来の中学校・高等学校の制度に加えて、生徒や保護者が6年間の一貫した教育課程や学習環境の下で学ぶ機会をも選択できるようにすることにより、中等教育の一層の多様化を推進し、生徒一人一人の個性をより重視した教育の実現を目指すものとした提言がなされ、のちに「学校教育法等の一部を改正する法律」が成立、平成11年4月より、中高一貫教育を選択的に導入することが可能となりました。

 本県におきましては、平成28年4月に、本県初の併設型中高一貫教育校「県立東桜学館中学校・高等学校」が開校し、当時初めて中学校一年生として入学された生徒たちが、昨年の春、6年間の中高一貫教育を修了され、それぞれの夢に向かって進路を進めたものと思います。そして今年の春には2期生が卒業されました。

 東桜学館は、「高い志 創造的知性 豊かな人間性」を基本理念に、3つの教育目標を掲げ、目指す学校像を「ICTの活用や協働的な学習、探究型の学習活動を展開し、これからの時代に求められる、自律的に活動する力や、多様な人々と協働できる力、持続可能な未来を創造する力、といった

 『21世紀型能力』の養成校として、本県をリードする学校」とし、その実現に向けて教育活動を進めているものと思います。

 昨年度在学した児童生徒の状況をみますと、出身小学校別生徒数は東桜学館の所在地である東根市93名をはじめとして、県内18市町、県外1市と、生徒数に多い少ないはあるものの、学区が県下一円という設置基準がまさに実現している状況のようでございます。

 こうした中で、私が心配致してもどうにもならないところではありますが、多少方言が違ったり、生活習慣が違ったりして子供たちが戸惑うことはないのか、いじめなどの問題はないのか、教職員と保護者のコミュニケーションはうまくとれているのか、他の学校と比較されて必要以上の負担がかかっていないか等、心配の種は尽きないところであります。

 一方で、昨年、本年と中高一貫教育6年間を修了した生徒の進路をみますと、学習面での生徒の頑張りが明らかに見てとれるところではありますが、学習ができるだけでは、東桜学館が掲げる基本理念の到達には足りないものと考えるところでございます。

 令和6年4月には庄内地域初となる併設型中高一貫教育校「県立致道館中学校・高等学校」が開校予定となっており、東桜学館のこれまでの取組みがどのように活かされていくのかも、極めて重要であろうと考えます。今後、最上地域や置賜地域への展開も考えられると思いますが、本県におけるこれまでの中高一貫教育の成果と課題についてどう評価しているのか、教育長にお伺い致したいと存じます。                     

【教育長答弁】

 中高一貫教育校は、6年間の計画的、継続的な教育を通して、生徒の個性や能力をより一層伸ばすとともに、中学生と高校生という異年齢集団での活動により、社会性や豊かな人間性を育成することができるという利点があります。

 県内初の併設型中高一貫教育校として開校した東桜学館は、他校に先駆けて探究型学習に取り組むとともに、文部科学省からスーパーサイエンスハイスクールの指定を受け、中学校段階から一貫した科学人材育成プログラムのもと、生徒全員が課題研究に取り組んでおり、その研究成果を全国的なコンテストや研究発表会で発表し、数々の優秀賞を受賞するなど、優れた成果をあげております。さらに、こうした学習を通して、東京大学や東京工業大学、東北大学などの難関大学をはじめとする国公立大学や、早稲田、慶応などのいわゆる有名私立大学にも合格者を出すなど、高い進学実績もあげております。

 学習面以外においても、中学生と高校生が一緒になって、学校行事や部活動はもとより、生徒達が自ら発案し、市民から募った平和メッセージを店舗に展示するボランティア活動等に取り組んでおり、これらの取組みを通して、生徒達には自主的・主体的に考え行動する姿勢、他者と協働する力、地域へ貢献する心が確実に育っているものと認識しております。

 一方、課題としては、中高一貫生と高校入学生との学習進度の差や、同学年次としての一体感の醸成が挙げられます。学習進度の差に対しては、少人数や習熟度別学級により丁寧に指導しており、一体感の醸成については、生徒同士が交流する機会を積極的に設けることにより、互いに高め合う環境づくりに努めているところです。

 来年度開校予定の致道館中学校・高等学校につきましても、東桜学館の成果を生かして、地域社会や国際社会を牽引するたくましさを身に付け、多様な分野で活躍する人材を輩出する学校となるよう、鋭意取り組んでまいります。

【質  問】

4 「ゼロカーボンやまがた2050」実現に向けた洋上風力発電推進の意義と県民の理解に  ついて 

 次に、「ゼロカーボンやまがた2050」実現に向けた洋上風力発電推進の意義と県民の理解についてお伺い致します。

 12年前、東日本大震災発災と同時に福島第一原発事故発生後、最大ピーク時平成24年5月16万4,865人の福島県民が全国各地で避難生活を強いられていました。この年の3月「山形県エネルギー戦略」が策定されました。

 吉村知事におかれましては「安全性、コストの面で原発は今まで考えられてきたようなエネルギーではない」とのお考えから、東日本大震災発災から間もない平成23年7月に秋田県で開催された全国知事会議におきまして、当時、滋賀県知事でございました嘉田由紀子氏と一緒に、原発への依存度を徐々に少なくしながら、風力や太陽光発電などの導入を進めていくことを旨とする提言を行いました。私は全面的に賛同致します、いわゆる「卒原発」の提唱でございました。そして、風力や太陽光など再生可能エネルギーをもって原発一基分に相当する101.5万kWという2030年度(令和12年度)の開発目標に向かって、これまで歩みを進めております。令和3年度末現在の目標に対する進捗状況は、電源が58.4万kW 66.6%、熱源が6.9万kW 50.2%、合計で65.4万kW 64.4%で、稼働分、計画決定分併せて概ね順調に推移しているものと認識致しております。しかし、この中で風力発電における令和12年度の開発目標45.8万kWに対して令和3年度末8.2万kW 17.9%の進捗率にとどまっています。こうした状況の中で、現在、遊佐町沖並びに酒田市沖における洋上風力発電事業についての取組みが進んでおります。

 去る4月に行われました県議選におきまして、遊佐沖洋上風力発電を考える会、現は鳥海山沖洋上風力発電を考える会に名称変更になったようでございますが、この会から酒田市・飽海郡区の立候補者に、公開質問状が届きました。

 質問は遊佐町沖、酒田市沖の洋上風力発電事業を推進すべきかなどの4項目で、選択肢のほか、いずれの項目にも自由記述欄がございましたので、合わせて3,000文字を越える記述をさせて頂きました。前段述べさせて頂いた通り、吉村知事の「卒原発」に賛同する立場と、原発再稼働に反対する立場を明確にした上で、洋上風力発電事業は推進すべきとし、「今を生きる私たちは、産業革命以降の化石燃料による近代化の中で、物質的な豊かさを享受してきたことが原因で、地球環境破壊が進行していることを、次の時代を生きる世代につけを回すことは、許されないことだと考えます。(中略)私も皆様方と同じく、日本海に沈む夕日の美しさをこよなく愛する一人です。しかしながら、安全な処理方法もない原発再稼働を許すこともできませんし、地球温暖化を今止めないと次の時代が立ち行かないとすれば、今を生きる私たちが『がまん』する必要があるのではないでしょうか」と書かせて頂きました。

 「鳥海山沖洋上風力発電を考える会」の方々のように、洋上風力発電事業に対して意見を持つ県民も多くいらっしゃるものと思われます。一方で、本県における風力発電に関する経過の中には、庄内海浜県立自然公園内で稼働する風力発電計画時において、地域の理解を得るために、運転開始が当初の計画より相当遅れてしまったという教訓もあります。様々な意見調整の中で、お互いに100%納得できる結果を導き出すことの難しさはあるものの、現段階での最善を導き出すために十分に意見を聴く必要がありますし、また、目標実現に向けましては、あらゆる協議をスピーディに進めることが求められているものと思います。

 「ゼロカーボンやまがた2050」実現に向けた洋上風力発電推進の意義と、県民の理解を得ながらどう取り組んでいくお考えか、環境エネルギー部長にお伺い致します。

【環境エネルギー部長答弁】

 近年国内では、集中豪雨などの気象災害が頻発・激甚化しており、その一因とされる地球温暖化の対策として、カーボンニュートラルを目指す動きが大きな潮流となっております。政府では、脱炭素化に向けて再生可能エネルギーを最大限導入することとし、エネルギー基本計画等において、洋上風力を再エネの主力電源化の切り札と位置付け、その導入を国策として進めております。

 本県でも、令和2年8月に「ゼロカーボンやまがた2050」を宣言し、再エネ導入をさらに加速することとし、令和3年3月に策定した「後期エネルギー政策推進プログラム」において、洋上風力発電事業の展開促進を盛り込んだところです。洋上風力発電は、新たな産業、雇用、観光資源の創出など地域活性化の起爆剤になり得るため、遊佐町沖及び酒田市沖への導入に向け、今年度は新たに副知事トップのもと5名の関係部長等が「洋上風力推進監」の任命を受け、関係部局が一体となって取組みを進めております。

 遊佐町沖については、この間、騒音や景観、漁業への影響など様々な声に丁寧に対応しながら、検討を進めてまいりました。この3月には、地元関係者等による法定協議会において、持続可能で魅力あるまちを次の世代に継承することを目的に、全国でも先駆的な洋上風力発電事業を通した遊佐地域の将来像を取りまとめ、促進区域指定に向けた手続きに入ることの合意がなされました。促進区域指定後、公募により選定される事業者には、将来像の実現と併せ、地域の不安の声にもしっかり対応するよう求めることとしております。また、酒田市沖についても、部会での議論を経て、有望な区域への選定に向けたプロセスに進むことの了解がなされており、引き続き、酒田市と連携し、漁業者や地域の理解促進を図ってまいります。

 今後とも、漁業との共存、地域との共生を目指した「地域協調型」の洋上風力発電の導入、ひいては、カーボンニュートラルの実現に向けて、丁寧かつ着実に取り組んでまいります。

【質  問】

5 持続可能な地域医療提供体制を確保するための地域医療構想の推進並びに新たな構想について

 次に、持続可能な地域医療提供体制を確保するための地域医療構想の推進並びに新たな構想について、お伺い致します。

 令和4年3月24日付けで厚生労働省医政局長から地域医療構想の進め方についての通知がなされ、各都道府県において第8次医療計画(2024年度~2029年度)の策定作業が2023年度までにかけて進められる際に、2022年度及び2023年度において地域医療構想に係る民間医療機関も含めた各医療機関の対応方針の策定や検証・見直しを行うこと。その際、新型コロナウイルス感染症拡大により病床の機能分化・連携等の重要性が改めて認識されたことを十分に考慮すること。また、2024年度より医師の時間外労働の上限規制、いわゆる医師の働き方改革を遵守することなどを求められております。また、昨年、同様の質問を致した際にも申し上げましたが、総務省は公立病院経営強化の推進について通知し「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」を示しました。この件に関しましては、今年3月14日に公益社団法人全国自治体病院協議会から公立病院経営強化に関する説明会の通知がなされ、医師の働き方改革や経営強化プランの取り組み状況等について、去る6月6日に説明会があったとお聞き致しております。

 昨年6月定例会での健康福祉部からの答弁では、ベッド数の調整を評価しながら、各病院の役割分担を明確にし、日本海ヘルスケアネットの取り組み事例のような、医療資源を有効活用し地域全体で連携する医療提供体制の構築に向け、地域医療構想調整会議等で協議が必要、と述べられております。

 地域医療構想は、2年後の2025年問題、申し上げるまでもなく団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に達することへの対応のため、平成26年に「医療介護総合確保推進法」成立によって進められているところでございます。

 昨今の医療・介護・福祉を取り巻く環境は、刻々と変化しています。少しそれた話になるかも知れませんが、酒田地区医師会でアンケート調査を実施したところ、2040年頃には現在の開業医の40%がなくなるとの予測をせざるを得ないとのことです。こうした危機感に対して、酒田市では、山形大学や日本海総合病院等と連携して、先進的な取組みも試みられております。高齢化率が高い中山間地域を中心として、オンライン診療システムや医療機器を搭載した自動車で出向いて診療する「医療マース」の実証実験が行われており、来年4月の本格運用を目指していると伺っております。

 このように、医療現場では、2025年問題から、高齢者の数がピークアウトし、担い手の急減とともに労働力不足が深刻化する2040年以降の社会に向け、医師の偏在解消、医師の働き方改革への対応、医療機関の再配置などへの関心が高まっています。例えば日本海総合病院は既に昨年で旧県立日本海病院建設時の起債償還がほぼ終了しており、病院としての機能強化も含め庄内地域における新たな地域医療提供体制の議論も必要との認識をされているようでございます。

 こうした地域医療を取り巻く環境が激しく変化する中で、持続可能な地域医療提供体制を確保するための地域医療構想の進捗状況並びに新たな構想の検討状況などについて、健康福祉部長にお伺い致します。

【健康福祉部長答弁】

 平成28年9月に策定しました本県の地域医療構想では、いわゆる団塊の世代が全て後期高齢者となる2025年の医療需要等を見据え、必要となる医療機能のほか、将来に向けて持続可能な医療提供体制のあり方をお示ししております。現段階においては、策定時と比較して急性期病床が700床以上減少する一方で、高齢化のさらなる進行により必要性が高まる回復期病床が同じく700床程度増加するなど、全体としては、一定の成果があがっているものと認識しております。

 さらに、議員よりお話がありましたとおり、昨年3月に政府より、改めて民間医療機関を含む全ての医療機関に対し、令和5年度末までに病床機能の転換等の対応方針の策定が求められており、現在鋭意検討が進められております。今年3月には、医療法に基づく医療提供体制の確保に関する基本方針が改正され、都道府県は毎年度、各医療機関が策定した対応方針の目標の達成状況を評価するとともに、将来の病床の必要数と報告された病床数との間に著しく差が生じている場合には、その要因を分析し、結果を公表することとされました。

 また、こうした検証を踏まえ、非稼働病棟や稼働率の低い病床のある医療機関に対しては、対応状況や今後の方針等について説明が求められるなど、新たなPDCAサイクルを通して地域医療構想を推進する内容とされております。県としましては、これらの点を着実に実施し、各地域の議論も喚起しながら、持続可能な医療提供体制の確保に向けて引き続き取り組んでまいります。

 また、新たな地域医療構想の検討に向けては、現在、厚生労働省において、高齢者人口がピークアウトする2040年頃を視野に、中長期的課題の整理が行われております。各都道府県の策定作業は令和7年度、2025年度となる見通しでありますが、県としましては、現在の地域医療構想の推進と並行し、政府の動向を注視しながら、引き続き現状や課題の把握・分析に努めてまいります。

【質  問】

6 農林水産政策における今後の方向性について               

 次に、本県の基盤産業であります農林水産業の今後の方向性について、お伺い致します。

 先日6月11日、酒田港の夏の風物詩として広く知られるようになりました「いか釣り船団出航式」に出席致しました。数年前まではあった、山形県籍の船はなく山形船友漁撈長会所属の県外籍4隻が出航いたしました。記憶に残るところでは、17隻が揃って出航したこともあったと思います。船で働く若者たちは、ほぼ全員がインドネシアからの研修生でした。寂しい気持ちになってしまいました。

 また、昨年の秋、私の住む平田地域の中山間地、小林地区で地区内ほぼすべての農地15町歩をたった一人で、転作作物として「そば」を栽培する方の転作田に、そばの花見に出かけた時、偶然に草刈りをしていたその方から声を掛けられ、一昨年、農林水産省が令和4年から5年間、一度も水を入れない転作田には「水田活用の直接支払交付金」を交付しない見直し方針を発表したことについて「自分はもはやここで生きている意味がなくなった」と、下を向いて、小さな声で言われた時は、士農工商の時代から、人間が生きるための基本である食料を生産する農業者の方々が、いかに時の政府のその時々の振る舞いに振り回されてきたのか、なぜ21世紀のこの時代にこんな仕打ちを受けるのか、抑えようのない憤りと、彼の悲しみに応える術のない無力感に襲われたことを思い出します。

 山形新聞3月23日付け朝刊の統一地方選県内の争点という特集記事に「人的基盤の強化 急務~厳しい経営環境、嘆きの声~」という見出しの極めて貴重な記事がございました。記事によりますと、2020年農林業センサスによると県内の基幹的農業従事者のうち個人経営体は3万9,034人で、2015年前回調査と比べて7,026人、15.3%減少とあり、65歳以上の割合は68.3%に上り、前回比8ポイントアップしたとあります。

 現在「食料・農業・農村基本法」の見直しが行われており、先般公表されました「中間とりまとめ」の中でも、農業従事者の急速な減少が課題とされたところでございます。水産業も厳しい状況に変わりはなく、2018年漁業センサスによると本県の海面漁業の就業者数は、2003年に778人でしたが、2018年には368人とほぼ半減したとあります。60歳以上は60%を超えるとあります。林業についても同様の状況であろうと推察いたします。

 私自身もこの度の選挙におきまして、「農林水産業の持続可能性確保に向けた本県独自の支援施策確立」を公約に掲げ、お訴えを致して参りました。このような状況を踏まえ、吉村美栄子知事の政策集にも掲げられた「生産額ベースの食料自給率200%超の実現」「スマート農業の推進・高度な農業経営人材の育成等」「やまがた森林(モリ)ノミクスの加速」「水産業の振興」といった農林水産政策をどのように実現していく方向にあるのか、特に担い手の育成・確保にどのように取り組んでいくのか農林水産部長にお伺い致します。

【農林水産部長答弁】

 本県では、令和3年3月に「第4次農林水産業元気創造戦略」を策定し、戦略の共通目標として「生産額ベース食料自給率200%超」の実現を目指しており、「意欲ある多様な担い手の育成・確保」をはじめとした5つの基本戦略を柱として、様々な目標指標に基づき、成果を検証しながら施策を展開しているところです。

 「担い手の減少」につきましては、県内では、基幹的農業従事者が年間約1,400人、海面漁業就業者が年間約20人減少している中で、令和4年の新規就農者は358人、海面漁業新規就業者は7人に留まっており、担い手の育成・確保が急務であると認識しております。

 そのため、県では、高度な農林業人材を育成する東北農林専門職大学(仮称)の開学準備を進めているほか、農業分野においては、地域農業を牽引するトップランナーをはじめとする高い生産力と経営力を持つ経営体の育成を図っていることに加え、このほかの多様な農業人材の育成・確保に向けたきめ細かな支援を行っております。

 また、漁業分野では、新規就業者確保に向けた就業体験の実施や基礎技術の習得などの就業支援に加え、新規就業者の独立後の経営の安定化・高度化に向けた支援などを行っており、令和5年4月には「山形県漁業経営・就業支援センター」を開設し、就業相談や独立後のフォローアップなど段階に応じた支援を実施しているところです。

 さらに、林業分野でも新規就業者の確保に向けて「山形県林業労働力確保支援センター」と連携し、就業体験の実施や求人情報の収集提供等に加え、林業事業体への求職者斡旋にも取り組んでいます。

 今後とも、本県の基盤産業である農林水産業の維持・発展に向け、これらの取組みを通して、担い手の育成・確保に重点的に取り組んでいくとともに、元気創造戦略に掲げる目標の実現を図ってまいります。

【質  問】

7 酒田港の基地港湾指定に向けた取組みの状況について

次に、令和3年12月定例会においても、洋上風力発電の拠点となる基地港湾の指定に向けた取組みについて質問しておりますが、現在の指定に向けた取組みの状況についてお伺いいたします。

本県がカーボンニュートラルを実現する上で、洋上風力発電による再生可能エネルギーは、極めて有力なものであると認識しているところであり、また、カーボンニュートラルポートを目指している酒田港にとっても、港湾地域の脱炭素化に向けた新たな再生可能エネルギーとして、その活用が期待できるものと思います。

 さらに、酒田港にとっては洋上風力発電設備の設置と維持管理の拠点、いわゆる基地港湾としての活用も期待されます。

 洋上風力発電が稼働している秋田県では、秋田港と能代港が基地港湾に指定され、秋田港では既に洋上風力発電設備の設置の拠点として利用されたところです。また、今年4月には新潟港が新たに基地港湾に指定されました。

このような中、山形県沖の海域で洋上風力発電の導入に向けた調整が進められておりますので、これらが順調に進行しますと、次は酒田港が国土交通省から基地港湾の指定を受けることが重要となります。

県では、酒田港が基地港湾に指定される必要性をどのように考え、指定に向けた取組みをどのように進められているのか、県土整備部長にお伺い致します。

【県土整備部長】

 県では、洋上風力発電に伴う経済波及効果を県内に最大限取り込むために、酒田港の基地港湾指定が必要であると考えています。想定される経済波及効果としては、①風車部品の輸入等による酒田港の利用拡大効果、②基地港湾に必要なふ頭の整備工事や風車組立工事等による建設業へのフロー効果、③風車組立に係る仮設部材等の関連産業創出の効果、が見込まれると考えています。

 酒田港の基地港湾指定に向けた取組みとしては、まず必要な2つの条件を整えてまいります。一つ目の条件である「2以上の海域で酒田港が利用される見込み」については、遊佐町沖が促進区域に指定され、酒田市沖が有望な区域に選定されることによって条件が整うことになると考えています。二つ目の条件である「基地港湾に必要な機能を有する見込み」については、促進区域指定後、酒田港の港湾計画に「洋上風力発電設備の基地機能」と「必要な施設の規模や構造」を位置づける変更を行うことで整うことになります。

 また、本年度からの取組みとして、指定を見据え、ふ頭工事で発生する浚渫土砂を受け入れる埋立用護岸の調査設計に着手しました。

 さらには、指定に向けた要望活動の取組みも行っています。今月8日には「令和6年度政府の施策等に対する提案」で、知事が県議会議長とともに、国土交通省へ酒田港の基地港湾指定を要望しました。今後も、適切な時期に、政府へ要望していく予定です。

 県としましては、引き続き、酒田港の基地港湾指定に向けた条件を整えるとともに、基地港湾指定による経済波及効果に対する地元の気運を醸成し、その状況と酒田港の有用性を政府にアピールしていくことが不可欠であると考えておりますので、関係市町や地元関連企業、関係部局と密接に連携して取組みを進めてまいります。

2023働く仲間と共に前進を!

2023年1月5日大手門パルズにて連合山形旗開きに立憲県連代表祝辞を申し上げました。

 明けましておめでとうございます。本日は「2023新春旗開き」の開催に、心よりの敬意とお祝いを申し上げます。

 昨年末には、本県鶴岡市西目地区におきまして、土砂災害が発生、犠牲となられました方々に、心よりのご冥福と、被災された皆様方にお見舞いを申し上げますとともに、救助活動、復旧活動の陣頭指揮をとられました吉村美栄子知事、皆川治鶴岡市長をはじめ、関係各位のご尽力に改めまして、衷心よりの敬意と御礼を申し上げる次第でございます。

 さて、新型コロナウイルス感染症の収束が見通せない状況の中ではございますが、規制のない年末年始を故郷山形でご家族と楽しく過ごされた方々も大勢いらっしゃったようでございます。今年こそは、コロナ収束の年になりますことを願うものでございます。

 一方で、昨年二月二十四日にロシアによるウクライナ侵略戦争が始まって、寒さと悲しみの中で震えながら新しい年を迎えた多くの人々がいることも忘れてはならない現実であると、申し上げなければなりませんし、「一刻も早い戦争終結」を、叫ばなければなりません。

 このような中にあって、我が国では「核共有」や「敵基地攻撃能力保持」「自衛隊の9条明記」「防衛費倍増」などなど、議論を軽んじ、説明責任を果たすことなく、これらに対するこれまでの認識すら簡単にくつがえす、民主主義、立憲主義をないがしろにする政権を、これ以上放置するわけにはいかないと、強く思うところでございます。

 さて、連合は「働くことを軸とする安心社会」に向けて、すべての働く仲間とともに「必ずそばにいる存在」を基本理念とし、労働運動に止まらず「自由、平等、公正で平和な社会を建設」「一人ひとりをまもり、地域をつなぎ、人権が尊重され、ジェンダー平等と多様性に満ちた安心社会の構築」へ果敢に挑み続けておられますことは、こうした時代だからこそ、全人類的に普遍的な取り組みでありますことは、申し上げるまでもないところでございます。

 アベノミクスの過ちがもたらした超円安、物価高。さらには、格差拡大、先進国最低の教育予算など等、我が国がめざさなければならない方向は明らかでございます。

 働く仲間の皆様方と一緒に、まずは賃金アップを勝ち取る春闘勝利へ、そして当面、4月の統一地方選勝利へ向けまして、皆様方のご指導、ご支援を賜りますようお願い申し上げる次第でございます。

 結びに、「自由」と「多様性」を尊重し、支え合い、人間が基軸となる「共生社会」を創り「国際協調」をめざし、「未来への責任」を果たすことで、一人ひとりが輝く社会を創るために、本年は、うさぎのように高く飛び跳ねる年となることを願い、皆様方のご健勝、ご活躍を心よりご祈念申し上げましてご挨拶とさせて頂きます。本日は、誠におめでとうございます。

2022年10月28日 令和3年度決算総括質疑

【質 問】

1 令和3年度の県政運営に対する評価について

 まず初めに、令和3年度の県政運営に対する吉村知事ご自身の評価についてお伺い致したいと存じます。令和3年度は、吉村知事におかれましては、平成21年2月に知事就任以来、13年目、4期目スタートの年度でございました。

 振り返りますと、リーマンショックによる世界的な金融危機に始まり、就任2年後の平成23年3月11日には、千年に一度とまで言われました「東日本大震災」さらには「福島第一原発事故」と、極めて厳しい時代の県政運営を強いられてまいりました。そうした中におきまして、一貫して「心の通うあったかい県政」を貫き通され、現場主義、県民目線の県政運営に邁進いたしておられるその姿勢には、頭の下がる思いでございます。そして、今さら申し上げるまでもございませんが、2019年末に中国においてと考えられております、新型コロナウイルス感染症について、2020年1月初旬に厚生労働省から各都道府県等に注意喚起が発せられて以降、WHOがパンデミックとみなしたのが2か月後の3月11日と記憶いたしております。本県で初めて感染者が確認されたのは、3月31日でございました。今夏には第7波に入ったと言われており、10月27日現在、本県における感染者数は121,423名となり、207名の死亡が確認されております。亡くなられた皆様方に改めまして心よりのご冥福をお祈り申し上げますとともに、療養中の皆様方の一日も早いご回復を願うものでございます。

 今日に至る3年近い経過の中で、新型コロナウイルス感染症から、県民の命と健康を守る闘いに挑み続けていると言っても過言ではないと評価致すものでございます。そして、本年8月に発生致しましたかつて経験したことがないような豪雨災害。地球温暖化に起因するともいわれる近年の自然災害への対応もまた県民生活を守るために挑み続けている闘いということでしょう。こうした地球規模での環境変化に対しては令和2年8月に「ゼロカーボンやまがた2050(ニーゼロゴーゼロ)」をいち早く宣言され、国の動きを先導する役割を果たしたものと評価致しております。さらには、コロナ禍やロシアのウクライナ侵略戦争、国の経済・金融政策に起因するかつてない円安、燃油高騰、物価高で、県内企業や農業関係者への打撃が大きく、県民生活が脅かされております。これらすべての対策が、一県だけで解決できるものではないことは、言うまでもないところでございますが、今後とも時宜を捉えた施策展開を期待するものでございます。さて、吉村知事におかれましては、4期目の県政運営にあたり「コロナ克服・山形経済再生!」をうたい、

1.「子育てするなら山形県」の実現

2.「健康長寿日本一」の実現

3.県民幸せデジタル化

4.「1人当たり県民所得」の向上

5.やまがた強靭化  

を掲げました。本県に必要な施策を的確に迅速に発し、実行することこそ、グローバル化した世界で起こる地球規模のあらゆる変化に対応し、県民生活の安定に資するものであることは間違いありません。そこで、令和3年度における県政運営の舵取りをどのように進められて、知事自身はどのように評価されておられるのか、吉村知事にお伺い致したいと存じます。

【吉村知事答弁】

 令和3年度は、新型コロナ感染拡大に直面し、国難とも言える社会経済情勢の中にあって、「コロナ克服・山形経済再生」を掲げ、全力で各種の取組みを進めてまいりました。
 新型コロナにつきましては、県民の皆様の命と暮らしを守ることを最優先に、関係機関と連携して検査・医療提供体制の強化を図ってまいりました。また、度重なる感染拡大の波に対しては、医療専門家や関係団体の御意見をお聞きしながら、県内医療の崩壊を防ぐため、その時々に応じた対策を講じ、現場に携わる関係者の御尽力と県民・事業者の皆様の御協力をいただいて対応してきたところでございます。

  感染防止対策の要となるワクチン接種につきましても、適時適切な情報提供など、市町村における接種が円滑に進むよう支援するとともに、県においても大規模接種を実施した結果、本県の接種率は全国上位で推移しております。
 県内経済につきましては、一部で持ち直しの動きがみられたものの飲食業や宿泊・旅行業などは大変厳しい状況が続いておりました。このため、「山形県新型コロナ対策認証制度」を創設し、県内外の方々が安心して飲食や宿泊ができる環境を整備し、令和3年度は
4,050施設の認証を行いました。加えて、消費喚起策としてプレミアム付きクーポン券の発行や観光キャンペーンを実施するなど、県内経済の回復に向けた取組みを展開するとともに、事業継続や雇用の維持に向けた支援を継続いたしました。あわせて、県総合文化芸術館の利用促進や文化芸術・プロスポーツを支援する入館料等の割引キャンペーンを展開し、コロナ禍にあっても文化・スポーツの振興に取り組んでまいりました。
 農林水産業に関しましては、新型コロナの影響を受けた外食産業の需要減少などにより、米価が大幅に下落しました。このため、政府に対し、全国知事会等を通して対策の必要性を訴えるとともに、県独自に「山形米(マイ)ハート贈ろうキャンペーン」をはじめとする消費拡大策を実施したところであります。あわせまして、人工衛星データを活用した「つや姫」の生育診断といったスマート農林水産業を推進するなど、本県の農林水産業の競争力強化にも取り組みました。
 また、令和3年度は多くの自然災害にも見舞われ、特に、春の降霜・降雹では、さくらんぼをはじめ多くの農作物に被害が発生したことから、「凍霜害・雹害緊急対策パッケージ」による資金面や技術面での総合的な支援を速やかに実施したところでございます。
 一方で、新型コロナを契機とする社会環境の変化に迅速かつ柔軟に対応し、少子高齢化を伴う人口減少や若者・女性の流出、地域経済の維持・発展といった地方が抱える共通の課題にも粘り強く取り組んでまいりました。
 具体的には、子育て環境のさらなる充実に向け、子育て費用の段階的な無償化に向けた取組みを開始するとともに、女性も活躍できる環境づくりに向け、若年女性の現状やニーズを把握するための「オンライン100人女子会」の開催や女性の賃金向上・処遇改善などへの支援を実施いたしました。
 また、地域経済活性化に資する新たなビジネスの創出のための交流拠点・ワンストップ相談窓口として、さらには働き方の変化に対応したコワーキングスペース機能も備えた「スタートアップステーション・ジョージ山形」を昨年の11月に開設したところであります。
 さらには、本県の未来を拓く「山形新幹線米沢トンネル(仮称)」の早期事業化に向けた取組みを推進するとともに、「やまがたワーケーション新幹線」の運行など、関係人口の増大と移住・定住の促進につながる取組みも展開してきたところであります。
 これらの取組みに加え、近年相次ぐ自然災害の一因ともいわれる地球温暖化対策は急務でありますので、本年2月に「カーボンニュートラルやまがたアクションプラン」を策定し、県全体で取組みを進めております。
 このように、令和3年度は、新型コロナや自然災害など喫緊の課題に対応しながら、ウィズコロナ・ポストコロナを見据えて、県勢発展につながる取組みを展開できたものと捉えております。
 今後とも、真の豊かさと幸せを実感できる山形県の実現に向けて、SDGsの視点も生かしながら、誰一人取り残されない持続可能な県づくりを多様な主体との連携により力強く推進したいと考えております。

【質 問】

2 令和3年度決算に関する監査委員の意見について               

 次に、令和3年度決算に関する監査委員の意見についてお伺い致します。県政発展のためには、予算の執行状況に関する監査の重要性は申し上げるまでもないところでございます。PDCAサイクルの中のチェックが機能することによって、次のアクションが起動する、まさに監査の役割は極めて大なるものだという認識でございます。令和3年度の歳入歳出決算審査におきましては、審査に付された歳入歳出決算書、歳入歳出決算事項別明細書、実質収支に関する調書及び財産に関する調書について、

(1)決算の計数は正確であるか

(2)予算の執行は議決の趣旨に沿って適正かつ効率的に行われているか

(3)資金の管理及び運用は適正に行われているか

(4)財産の取得、管理及び処分は適正に行われているか

の4項目を審査の着眼点にして進められたとございます。これらに基づき審査した結果、3点の意見が付されております。

 1点目は、「持続可能な行財政基盤の確立」とありまして、経常収支比率と将来負担比率は改善、調整基金は増加、県債残高は減少、の状況から本県財政は順調のように見えるところでございますが、一方で、公債費が高い水準で推移とあり、財源不足が続き厳しい中で、歳入歳出の両面から持続可能な行財政基盤を確立するため、「山形県行財政改革推進プラン2021(ニーゼロニーイチ)」に基づく取組みが必要であること。

 2点目は、「ウイズコロナ・ポストコロナを見据えた県づくり」とありまして、新型コロナウイルス感染症が長期化する中で、原油価格・物価高騰、国際情勢の変化、人手不足等、地域経済の厳しい状況を踏まえ、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務の効率化、県民サービスの向上など持続可能な県づくりの推進に取り組まれたいこと。

 3点目は、「財務事務の適正な執行」とありまして、「不適正な事務処理を未然に防止するための取組」を重点監査項目に位置付けられ、内部統制が施行され2年が経過したことも踏まえた監査がなされたものと思います。

 令和3年度は、新型コロナウイルス感染症対応などで、職員皆様方が多忙を極める一年だったと思います。そうした中におきましても、県民皆様からお預かりを致します「税金」の適正執行は必要不可欠なところでございます。今回の監査結果において、指摘や注意事項が前年度より増加していることについて、監査委員としてどのように捉え、また、その上で改善に向けて必要な対応策としてどのような点に重点を置いて取り組むべきかについて、代表監査委員にお伺いいたします。

【代表監査委員答弁】

 令和3年度定期監査は、全部で231の機関を対象に実施し、このうち、是正・改善を要するものとして指摘、あるいは注意事項の対象となった事案は76の機関で117件、前年から27件の増加となりました。具体的なものとして特に多いのが、支出事務における支払の遅れ、収入事務における調定の遅れなどのほか、補助金等の交付事務において、交付決定や額の確定の遅れ、変更承認の手続に不備があったことなどであります。また、前年度と同様の不適正な事務処理が繰り返されている所属も、いくつか確認されたところであります。

 こうした不適正な事務処理が発生した背景には、新型コロナへの対応をはじめ、凍霜害や豪雪への対応など、全体的に事務量が増加した中で、関係規程等に対する理解が十分でなかったことや、組織的な確認や進行管理が徹底されていなかったことなどが挙げられます。ひとたび不適正な事務処理が発生すれば、その内容によっては、是正改善のための措置や原因の分析、再発防止策の検討と実施に多くの時間と労力が割かれることになり、その影響は事業者等多方面に及ぶことにもなりかねません。こうした事務処理上のリスクの発現を未然に防止し、事務の適正執行を確保するための内部統制が、知事部局において本格的に導入されて2年余りが経過し、この間、他の任命権者においても同様の取組がはじまり、職員の意識の向上につながっていると捉えておりますが、この度の監査結果を踏まえると、改めて、全ての職員が内部統制の趣旨を十分理解し、主体的に取り組むことが重要であると認識したところです。このため、県政に対する県民からの信頼は、職員一人ひとりの適正な事務の執行の上に成り立っていることを強く自覚し、所属長の適切なマネジメントの下、職員同士のコミュニケーションを活性化させ、風通しの良い職場風土を醸成し、事務事業の進捗状況の共有や、協力体制の一層の強化などに取り組んでいただきたいと考えております。

 監査委員といたしましては、こうした内部統制の実効性を高めるための取組状況について、定期監査の中で重点的に確認を行うとともに、発生事案について、同様の誤りを防止する観点から、その要因と再発防止策も含めて、全庁的に情報を発信し、注意を喚起してまいります。

【質 問】

3 コロナ禍における病院事業の状況と課題について

 (1) 令和3年度病院事業決算の評価と課題について

 次に、コロナ禍における病院事業の状況と課題について、まず令和3年度病院事業決算の評価と課題認識についてお伺い致したいと存じます。

 令和元年度の決算特別委員会で、平成30年度病院事業決算状況について、お尋ねを致したことがございますが、その時点での監査の状況から、6年連続の赤字であり、依然として厳しい経営状況にあるとのご指摘でございました。また、平成28年度に初めて資金不足が生じたことから、平成29年度には資金不足比率が12.1%となり、企業債発行に際し総務大臣の許可が必要となり「資金不足等解消計画」を策定致しました。そして病院事業局あげて経営健全化に動き出した矢先に、新型コロナウイルス感染症への対応に迫られる事態となったところでございます。「県立病院における新型コロナウイルス感染症への対応については、3病院で県内最多(68床)の専用病床を確保するとともに、感染症外来を運営し、多くの感染患者を受け入れました。また河北病院では山形県PCR自主検査センターを運営し、4,326件の検査を実施するなど、感染の収束に向け、県立病院が有する総合力を発揮してきた」との説明がございました。

 こうした新型コロナの影響がある中、患者数は入院外来ともに前年から増加し、医業収益は約17億6千万円の増加。経常収支は、コロナに係る補助金の受入れなどもあり約16億3千万円の黒字と大きく改善致したようでございます。先ほども申し上げましたように、「中期経営計画」や「資金不足等解消計画」を策定し、経営改善に鋭意取り組んでいるところではありますが、県立病院の持続的・安定的な運営基盤の確保のためには、本格的なウイズコロナ・ポストコロナの到来を見据えた、更なる経営改善の取組みが急務と考えるものでございますが、いかがでしょうか。こうしたことを踏まえ、病院事業会計の令和3年度決算の結果をどのように評価されておられるのか、また、課題をどのように認識されておられるのか、病院事業管理者にお伺い致します。

【病院事業管理者答弁】

 令和3年度の病院事業は、前年度に引き続き、多くの新型コロナの感染患者を受け入れて治療に最善を尽くしながら、河北病院では山形県PCR自主検査センターを運営するなど、コロナ対策の中核となって取り組むとともに、県民の皆さんに必要な医療を持続的に提供することにより、県立病院としての役割を積極的に果たしてまいりました。

 そのような中、病院事業会計の令和3年度決算を、前年度と比較しますと、入院では、中央病院や新庄病院において、新型コロナ専用病床を確保しながらも、延期していた予定手術を徐々に再開したことなどにより、患者延数は1,925人の増加となり、外来では、前年度は一般の患者の受診控え等により患者延数が大幅に落ち込みましたが、延期していた治療や検査を徐々に再開したことなどにより、1万7,653人の増加となり、医業収益は、17億6千万円の増収となりました。

 一方で、医業費用は、患者延数の増加に伴う薬品や診療材料の購入に要する材料費の増、退職給付費等の給与費の増、重油の高騰による燃料費の増などにより、9億7千万円の増加となりました。その結果、差引きとなる医業収支は、7億9千万円の増と大きく改善したところであります。また、医業外収益は、河北病院で新型コロナ専用病床を新たに6床設けたことに伴う病床確保料や各病院の院内感染拡大防止対策等に係る新型コロナ補助金の受入れが、6億1千7百万円増加したことなどにより、これを含む経常収支は、6億7千3百万円改善し、16億3千3百万円の黒字となりました。

 この結果、地方公共団体の財政の健全化に関する法律による資金不足比率は、14.1パーセントだったものが10.0パーセントになり、大きく改善したところであります。このように令和3年度の決算は、前年度に引き続き新型コロナへの対応に係る病床確保料等の受入れにより、経常黒字となりましたが、本業である医業収支は、改善はしたものの新型コロナ流行前の令和元年度を依然として下回っており、決して予断を許さない厳しい状況にあるものと認識しております。加えて、令和5年度の新型コロナの病床確保料等の政府による支援は、現時点ではその方針が明確に示されておらず、今後、制度の縮小も想定せざるを得ないほか、不安定な国際情勢に起因する原油価格・物価の高騰によるコスト増が経営を圧迫すると考えられるなど、懸念材料が多く、これまでにも増して経営改善に注力する必要があると考えております。

 こうした新型コロナの収束が依然として見通せない状況や社会情勢の急激な変化の中にあって、持続的に県民医療を守り支えるためには、医師をはじめ専門的な知識等を持った人材の確保・育成も重要であります。その取組みの一環として、新庄病院では、昨年度新たに腫瘍内科の医師を配置し、中央病院やこころの医療センターでは、多くの専門研修医が研修修了後もそのまま病院に定着したほか、今年度にはなりますが、河北病院において新たに総合診療医を配置するなど、医療提供体制の充実を継続的に図っております。

 また、高度化、複雑化が進む医療情報システムに関する実務経験を有する医療情報職を計画的に採用し、各病院への配置を進めるとともに、令和3年度から、病院事務全般を専門的に担当する病院経営職の採用を始めたところであります。加えて、地域の医療需要の変化に的確に対応して、病院の機能や組織体制の見直しを進めるとともに、診療報酬上の加算の上位区分の取得等に努めて収益の向上を図ったことなどにより、令和3年度の診療単価は、入院、外来とも過去最高となりました。さらに、AIによる診療前問診システムの導入などDXの推進による業務の効率化を進めてきており、引き続き、あらゆる角度から経営改善に努めなければならないと考えております。県立病院が、引き続き、本格的なウィズコロナ・ポストコロナを見据えながら、救急医療や高度で専門的な医療など、地域医療提供体制を支える県立病院としての役割を果たせるよう、資金不足等解消計画や中期経営計画に基づき、病院事業の運営基盤の一層の強化にしっかりと取り組んでまいります。

【質 問】

(2) 県立病院における処遇改善手当の実績等について

 次に、県立病院における処遇改善手当の実績等についてお伺い致します。

 昨年、岸田政権におきまして、「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」の中で、「未来社会を切り拓く『新しい資本主義』の起動」と称し「分配戦略~安心と成長を呼ぶ「人」への投資の強化~」として、公的部門における分配機能の強化等を掲げ、看護、介護、保育、幼児教育などの現場で働く方々の収入の引き上げを、閣議決定され、本年2月に衆議院本会議において令和3年度補正予算、令和4年度予算等が可決されました。そのことを受けまして、賃金水準を引き上げることに、異論を申し上げるわけにはいかないと認識しながらも、今回の処遇改善の制度は、例えば、コロナ禍で多数のPCR検査をこなした「臨床検査技師」や、コロナの重症患者に使用するECMO(エクモ:体外式膜型人工肺)の操作に欠くことのできない「臨床工学技士」など、看護職以外の職員を対象にするかどうかの判断は病院に委ねるということになっており、中途半端な印象がぬぐえないのであります。何よりも県民の命と健康を守るために一丸となって対応する同じ職場で働く方々が、この政策によって格差を助長し、あるいは同一職種においても賃金に格差が生じないのか、疑問を申し上げたところでございますし、更には、2月から本年9月までの期間となっていることから、その後の対応に懸念を申し上げたところでございました。

 そこで、昨年度2か月間の手当支給の実績はどのようになっているのか、また、支給対象を看護師のみとしたこと、支給されない病院があることについて、県立病院内においてどのように受けとめられているのか、病院事業管理者にお伺い致しておきたいと存じます。また、本年10月以降の診療報酬で月額12,000円/人を確保するためには、県立中央病院での必要金額はどのくらいになって、その負担をお願いする入院患者一人当たりの負担はどのくらいになるのか、併せてお伺い致します。

【病院事業管理者答弁】

 県立病院では、政府の補助事業を活用した看護職員に対する処遇改善を今年2月から実施しております。その昨年度の実績は、看護師及び助産師に対し一人当たり月額4,000円の手当を支給し、その額は合計で846万円となりました。支給対象については、政府の補助事業の算定対象とされた中央病院、新庄病院及び河北病院に勤務する看護職員としましたが、病院現場からは、①コロナ禍の中で他の病院と同じ様に県民の命と健康を守るために頑張っているこころの医療センターの職員や、②看護職員と一丸となってチーム医療を提供しているコメディカル職員についても、同じように処遇改善するべきだ、との声も聞かれたところです。こうした声に対しては、当局としても真摯に受け止め、政府の補助事業の制度設計などを丁寧に説明したうえで、支給対象者を決定したところであります。

 10月以降は、診療報酬制度の中で看護職員処遇改善評価料という新たな加算が創設され、処遇改善を実施するために必要な財源が措置されることとなりましたが、加算の対象となる職員については従前の国庫補助制度と同様であり、当局として新たに見直すべき要素がなかったことや、近隣県の対応状況なども踏まえ、労働組合との話合いも行ったうえで、処遇改善の対象者を9月までの取扱いと同様とすることとしたものであります。また、中央病院において、この処遇改善を実施するために要する金額は、月962万円であり、入院患者一人当たりの負担額は、3割負担の患者の場合1日当たり246円となっております。

【更 問】

 こうした制度の在り方について、健康福祉部長にお伺い致します。

 政府は、看護職員の処遇改善に必要な金額を診療報酬改定の中で確保するとともに、対象となる施設や職種について引き続き限定的とするという制度にしたのではないかと思っています。健康を害して入院をせざるを得ない患者さんの負担が増えるという考え方が中々理解できないところでございます。ましてやこの10月からは、後期高齢者の医療費2割負担も始まっていること、年金の目減り、物価高騰のこの状況などを考えますと、県民、国民の負担ばかりが大きくなると言わざるを得ないところでございます。

 山形県地域医療構想、新公立病院改革ガイドラインや医師の働き方改革、医療法の改正など、地域医療を巡る状況が大きく変化する時代の中にあり、医療従事者の処遇改善はその中でも重要であると考えております。看護職員の処遇改善については、ただ今述べましたような課題がある訳でございますが、県としてどのように考えているのか健康福祉部長にお伺い致します。

4 令和3年度企業局水道用水供給事業の状況と対応について

 次に、令和3年度企業局水道用水供給事業の状況と対応についてお伺い致します。企業管理者の説明によれば、企業局所管の4事業会計の純利益については、①電気事業会計では約26億6,253万円 ②工業用水道事業会計では約1億180万円 ③公営企業資産運用事業会計では約8,314万円 ④水道用水供給事業会計では約8億6,757万円となっており、4事業会計の純利益の合計は約37億1,506万円と報告されており、順調な経営状況であると受け止めています。

 一方、我々に身近な水道用水供給事業について、監査委員からは、将来の水需要想定に基づき効率的な経営を図り、施設・設備の老朽化対策や管路の耐震化、自然災害対応などを確実に進めていくべきと指摘されております。

 振り返ってみますと、平成25年7月に山形県を襲った豪雨により村山広域水道で給水停止に至った事案があります。西川町大井沢地区では、24時間の雨量が当時の過去最大となる212mmに達し、用水施設そのものが直接被害を受けることはなかったものの、水源の寒河江川では濁度が急激に上昇し、西川浄水場において浄水処理を継続することが困難となったことから、受水市町への給水が停止しました。そのため、村山地域の4市2町では最大8日間の断水となるなど広域的に、県民の生活に甚大な影響が発生しました。とりわけ、近年は、気象災害が激甚化する傾向にあり、日本の各地で線状降水帯やゲリラ豪雨などの大雨被害等が頻発しています。山形県においては、令和2年と本年、最上川が増水して大きな被害が発生し、特に本年8月の大雨では置賜地域を中心に河川の氾濫により甚大な被害を受けました。企業局に確認したところでは、綱木川などで過去最大の濁度を記録したと聞いております。

 こうした頻発し激甚化する自然災害に的確に対応していくための方策として、多くのコストと時間が必要なハード整備を今すぐ行うことは容易ではないと思いますが、ひとたび給水停止となれば県民生活に多大な影響が生じます。このような事態を招かないためにも、濁度対策を始めとするソフト面の備えをしっかりと進めていくことが重要であると考えます。そこで、企業局の水道用水供給事業において、これまでどのような対策を講じてきたか、また安定的な水道用水の供給に向けて、今後どのように対応していくのか、企業管理者に伺います。

【企業管理者答弁】

 平成25年度の豪雨により、村山広域水道では寒河江川の原水濁度が平常時は概ね10度以下のところ、3,000度を超えるまで上昇し、給水停止を余儀なくされ広域・長時間にわたる断水が発生しました。  その要因としては、ハード面では浄水処理のための薬品注入機及び沈殿池の能力が不足していたこと、ソフト面では給水が停止した場合に、受水市町間で融通可能な水量を共有していなかったなど、企業局と受水市町間の連携が不足していたことが挙げられます。こうした事態を受け、県では「浄水機能の強化」と「市町村との連携強化」を図るための検討委員会を設置し、ハード、ソフト両面から高濁度対策の検討を行い、平成25年度から具体的な対策を順次実施してきました。

 まずハード対策については、平成25年から28年にかけ、村山広域水道の浄化機能の強化を図るため、①濁りを除去する薬品を従来の2倍注入できるようPAC等の設備を増設しました。②加えて沈殿池の処理量の増加を図るための「沈殿池中間取出し装置」を新設しました。③さらに、浄水工程で大量に発生する汚泥を乾燥させる「天日乾燥床」を13床から18床に増やしたところです。こうしたハード対策を、他の浄水場の処理能力の強化につなげるため、既に定めていた各浄水場の「機器更新計画」を再整備し、高濁度水でも対応可能な設備投資を順次行ってきております。また、ソフト対策については、①浄水に関する知識と事故発生時の対応力を向上させるための「危機管理研修」を充実・実施するとともに、②防災くらし安心部と連携し「断水対策連携マニュアル」を策定し、高濁度水の発生の恐れがある場合、事前に受水市町の配水池に一定の貯水量を確保するとともに、企業局側が給水制限する場合は、市町間で相互に受水量の調整を行う仕組みを構築しました。③さらには、マニュアルに基づく訓練を、受水市町からも参加を得て全ての浄水場において毎年1回実施しております。

 平成25年度以降も豪雨災害は頻発、激甚化しており、令和2年7月豪雨では村山広域水道において5,000度を、今年8月の豪雨では置賜広域水道で1,900度を超え、それぞれ過去最高の濁度を記録しましたが、ハード、ソフト両面での備えを着実に実施してきたことで、水道用水の供給を継続することができました。広域水道は、県民生活にとりまして最も重要なライフラインの一つでありますので、ハード、ソフト両面での対策を進めることで、危機管理の対応力を高め、安全で安定的な水道用水の供給に万全を期してまいります。

【質 問】

5 水道広域化推進プラン策定に向けた現在の状況について 

 次に、水道広域化推進プラン策定に向けた現在の状況についてお伺い致します。ただ今、水道用水供給事業者としての企業局の対応についてお聞きいたしましたが、県民に水道水を届ける市町村などの事業者も多くの課題を抱えているものと認識致しております。人口減少や水道施設老朽化への対応が待ったなしの状況であり、今後、経営の更なる効率化が求められています。そのため大きな方向性として水道の広域化が継続して議論されてきました。広域化につきましては、県では平成29年度に策定した「山形県水道ビジョン」の中でも有効手段と位置づけ、県等の方向性を示しているところでございます。

 また、国においても広域化を促進するため、今年度中の「広域化推進プラン」の策定が、都道府県に要請されております。6月定例会でもお聞き致したところでございますが、県では、広域化に向けた具体的な検討の場として、県内4地域で「山形県水道事業広域連携検討会」を立ち上げ、令和3年度も委託によるシミュレーションを実施するなどして、検討会での議論を進めてきたと認識致しております。

 そこで、令和3年度を含め、検討会のこれまでの開催状況と、議論されている内容、さらに広域化に係る国の交付金について最大限の活用を目指していくべきと考えますが、そうした視点にたってプランの策定が進んでいるのか、防災くらし安心部長にお伺い致します。

【防災くらし安心部長答弁】

 県では、水道事業の基盤強化を目的とした広域連携を推進するため、県内4地域ごとに、市町村等の水道事業者、水道用水供給事業者である県企業局、「広域連携の推進役」となる防災くらし安心部で構成する「山形県水道事業広域連携検討会」を、平成30年11月に立ち上げ、「水道広域化推進プラン」の策定に向けた検討を重ねてきたところです。令和3年度の17回を含め、令和4年9月末までに合計108回開催しております。

 検討会では、平成30年度に、将来の見通しとして、急激な人口減少や水需要の減少に伴う料金収入の減少、水道施設の更新費用の増大、水道職員数の減少等を想定し、市町村等の水道事業者がこのまま水道事業を単独で継続した場合、水道経営が大変厳しいものになるとの認識を共有したところです。そのうえで、各地域で時期に差はありますが、平成30年度から令和2年度までの間で、経営の一体化や施設の共同利用、システムの共通化など、どのような連携であれば効果があるのかについて、様々な条件を設定し、シミュレーションを実施しております。

 令和3年度には、財源についてより精緻なシミュレーションを実施するとともに、専門家の御意見もいただきながら、各地域における水源、地形及び人口等の要因を踏まえた議論を進めてきました。その結果、①施設の共同利用等のハード面での連携、②資材等の共同購入等のソフト面での連携、③広域化による一体的な経営など、それぞれの地域で目指すべき方向性が見えてきたところです。現在は、県内4地域ごとの広域化の推進方針を「水道広域化推進プラン」にどのように記載していくか、市町村等と最終的な協議を行っているところです。

 一方、広域化による施設の統廃合や老朽化・耐震化対策には莫大な費用を要することから、財源として政府の交付金を最大限活用することは、水道経営にとって極めて有効であります。政府では水道事業の広域化に向け、令和16年度までの時限措置として原則10年間活用できる交付金を準備しております。市町村等がこの交付金を活用するには、「水道広域化推進プラン」に具体的な広域化の方向性を記載することが必要となるため、県としては、市町村等が必要な交付金を十分に活用できるよう、このプランを今年度内に策定したいと考えております。いずれにしましても、県としましては、県民の皆様に安全で安心な水を安定的に供給できるよう、市町村等の事業者と連携しながら、しっかりと取り組んでまいります。

【質 問】

6 本県における環境教育の現状と今後の取組みについて

 次に、本県における環境教育の現状と今後の取組みについてお伺い致します。去る7月の下旬、地元のコミュニティ振興会で長年続けている「水の旅」という水の大切さや環境を守ることについて、魚のつかみ取りや水槽での展示をしながら、子どもたちと楽しむイベントに参加致しました。そのことをTwitterに投稿したのですが、これが後に大炎上するという初めての経験を致しました。私の写真付き投稿の10日後くらいに、どなたかは全く分かりませんが、同じイベントだと思われるTwitter投稿があり、用水路を堰き止めたつかみ取りスペースに、アメリカザリガニと金魚を放流した動画が添付されていたのです。アメリカザリガニが外来生物で生態系に多大な悪影響を及ぼしていることは私も知っていますが、挨拶の後すぐに中座して、その場でのそのようなことがあったことは全く知らずに、8月の後半になって大炎上となったのです。その後、ジオパーク事務局の指導員から、外来種などの状況や環境保全に関する講話をお聞きして、自分の無知さに驚いた次第です。あまりに勉強不足の自分を大いに反省しながら、環境教育の状況についてお伺い致すものでございます。

 私たちは、言うまでもなく地球の環境の中で生きています。大気、水、土、生物が互いにつながり、それぞれの地域で環境を形づくっています。その環境からの大きな恵みに支えられて、初めて健康で文化的な生活を送ることができています。一方で、私たちの日々の生活や経済活動は自然環境に大きな負荷を与えてきたことも事実です。地球温暖化の問題をはじめ海洋プラスチックごみ汚染、生物多様性の損失などの環境問題が、世界中で、また、本県においても深刻さを増しているものと考えます。こうした環境問題を改善するためには、ライフスタイルを見直し、環境に配慮したものへと転換していくことが必要です。つまり、一人ひとりが人間と環境との関わりについて理解を深め、環境に配慮した生活や責任ある行動をとることが、今まさに求められており、環境教育の重要性はますます高まってきていると言わなければなりません。外来生物の問題やゴミの減量・リサイクルさらには水資源の保全、カーボンニュートラルなど、幅広く環境について学べる機会を提供し、環境問題を「自分ごと」として捉え、行動していくための環境教育に、より一層取り組んでいく必要があると考えるところでございます。

 そこで、本県の環境教育における令和3年度を含めたこれまでの取組状況はどうか、そして環境教育における課題をどう認識し、今後どのように取り組んでいくのか、環境エネルギー部長にお伺いします。

【環境エネルギー部長答弁】

 令和3年3月に策定した「第4次山形県環境計画」において、「持続的発展が可能な豊かで美しい山形県」を構築していくには「人づくり」が全ての基盤であるとしていることから、環境教育をすべての施策にかかる重要施策と位置付け、学習機会の提供と普及啓発等に取り組んでおります。

 まず、学習機会の提供については、県内唯一の環境分野の試験研究機関である環境科学研究センターを環境教育の拠点として、環境に関する相談対応や環境教室をはじめ、親子で楽しむ環境科学体験デー、水生生物調査などを実施しており、昨年度は小中学生を中心に延べ7,400名の方々に参加していただいたところです。また、県では高校・大学生を対象としてSDGsの中でも環境分野をテーマとしたワークショップを開催し、昨年度は19校700名の参加をいただきました。

 次に普及啓発については、スマートフォン対応のサイト「環境情報やまがた」を作成し、環境保全に関する高校生の取組みや、カーボンニュートラルをわかりやすく学べる計7回のオンライン講座等の情報を提供するとともに、昨年度から開始したSNS「つなぐ環境やまがた」を活用し、広く県民に向け身近な環境情報をタイムリーに発信しているほか、本県出身のYouTuberを起用した動画を制作した結果、今年3月からの再生回数が5,000回を超えるなど環境に関する理解が進んでいるものと考えております。

 環境教育の内容は多岐に渡り、また年代毎に興味・関心も異なるため多様なニーズへの対応が課題であり、さらに次代をけん引する若者たちが環境に関心を持ち、率先して保全等に向けた行動を起こすよう育成し活躍できる環境づくりが必要と考えております。今年度から新たに始めた学生環境ボランティア制度は、意欲のある県内の大学生26名を「やまがたカーボンニュートラル・サポーター」、通称「やまカボ・サポーター」として任命し、「やまがた環境展」など県内各地の環境イベントで普及啓発活動を担っていただいており、今後さらに活動の場を提供し、環境教育の担い手として活躍できるよう取り組んでまいります。

 さらには、若者世代はもちろん、あらゆる世代に対し、気候変動対策や海洋プラスチック問題、生物多様性を守り・活かす自然共生社会の構築など、多様なニーズにきめ細かに応えられるよう環境教室のメニューを充実するとともに、ホームページやSNSを活用した情報発信を強化していきたいと考えております。

 今年度制定を予定している「山形県脱炭素社会推進条例(仮称)」においても、「脱炭素の学び・人材育成」を脱炭素社会の実現を目指すための取組みの柱の1つとして盛り込むよう検討を進めており、これらにより環境問題を「自分ごと」として捉え行動できる人材の育成に向け、環境教育・学習のさらなる推進にしっかりと取り組んでまいります。

2022年9月定例会最終日10月7日 反対討論述べる

請願26号・28号「日本政府に核兵器禁止条約の署名及び批准並びに締約国会議へオブザーバーとして参加することを国に求める意見書の提出について」不採択とする委員長報告に対する【反対討論】

県政クラブを代表いたしまして、ただ今議題になっております、「日本政府に核兵器禁止条約の署名及び批准並びに締約国会議へオブザーバーとして参加することを国に求める意見書の提出について」提出された請願26号並びに同趣旨の28号は、極めて願意妥当とする立場から、これを不採択とする総務常任委員長報告に反対の立場から討論申し上げます。

世界で唯一の被爆国である我が国は、本年、被爆77周年を迎えました。去る8月6日及び9日、広島、長崎におきまして二度とあってはならない核の使用を、悲痛な叫びとして世界に発信されたことは記憶に新しいところでございます。特に私は、小学生の平和への願いを込めたスピーチに涙を流しながら、この子たちの時代に核を残してはならないと、強く強く思いを深めたところでございます。

今年2月24日、ロシアによる蛮行ウクライナ侵略戦争が始まって、すでに7ヶ月が過ぎました。この間、ウクライナの町並みはことごとく破壊され、人々は国を追われ長い避難生活を強いられています。子供たちから笑顔を奪い、安心して遊び、学ぶことすら奪われた状況を絶対に許すわけにはいきません。さらには、プーチンロシア大統領は、核の使用も有りうるような、あってはならない発言をするなど、世界を恐怖にさらしている行為は、断じて許すことはできないものであります。

岸田内閣総理大臣も、8月6日広島平和式典において「被爆地・広島出身の総理大臣として、核兵器による威嚇が行われ、核兵器の使用すらも現実の問題として顕在化している今こそ、広島の地から『核兵器使用の惨禍を繰り返してはならない』と、声を大にして世界の人々に訴える」と述べ「核兵器のない世界へ」という著書も発表し、実現に努めていくと、総理大臣として繰り返し述べています。

もう一度申し上げます。私たちは、次の時代を生き抜いていく、子供たち、孫たち、ひ孫たちの時代に核の脅威を残したまま、引き継ぐことなど許されないのです。

以上の点を踏まえ、「日本政府に核兵器禁止条約の署名及び批准並びに締約国会議へオブザーバーとして参加することを国に求める意見書の提出について」提出された請願26号並びに同趣旨の28号は採択すべきものであり、不採択とする総務常任委員長の報告には、強く反対するものであります。山形県並びに山形県民にとって、日本国民にとって、緊急性を要する請願であり、これを不採択にするなど言語道断と言わざるを得ないことを付して、反対討論と致します。

被爆77周年原水爆禁止山形県平和大会

黙祷

【立憲民主党山形県総支部連合会 挨拶】

被爆七十七周年原水爆禁止山形県平和大会が、日本のアンデルセンと称された童話作家「浜田広介」を育んだ「まほろばの里」高畠町で開催されますことに、心よりの敬意と感謝を申し上げます。 

さて、新型コロナウイルス感染症発症以来、これまでの当たり前の日常が奪われ、社会活動が一変するという、まさに地球的規模のパンデミックに襲われました。現在、我が国におきましては、第七派に入ったと言われ、重症化率は低いとは言われながらも、昨日、過去最高の十九万五千人を超える感染者が確認されました。まさに未だ収束の道筋は見えない状況と言わざるを得ません。

そうした中におきまして、今年二月二十四日、ロシアによるウクライナ侵略戦争が始まって、すでに5ヶ月がたちます。この間、ウクライナの町並みはことごとく破壊され、人々は国を追われ長い避難生活を強いられています。子供たちから笑顔を奪い、安心して遊び、学ぶことすら奪われた状況を絶対に許すわけにはいきません。さらには、プーチンロシア大統領は、核の使用も有りうるような、あってはならない発言をするなど、世界を恐怖にさらしている行為は、断じて許すことはできないものであり、強く強く断じるものでございます。また、「核共有」や「敵基地攻撃能力保持」「自衛隊の9条明記」などなど、こうした情勢に便乗するかのような政治家のあるまじき発言が相次ぐことへ、不快感を覚えるのは、私だけなのでしょうか。

さて、先に行われました参議院議員選挙におきましては、私たち立憲民主党に対しまして、大きなお力を賜りましたこと、改めまして深く感謝申し上げますと共に、議席を減らす結果になりましたこと、心よりお詫び申し上げなければなりません。この度の結果を真摯に受け止め、平和を希求する政党として、一から再スタートする覚悟でございます。皆様方の変わらぬご指導ご鞭撻をお願い申し上げます。

一方、選挙戦の中で、本来争点にならなければいけない「平和」に関する問題は、自公政権と補完勢力があいまいにしたまま、平和をないがしろにする勢力が三分の二を占める結果となったことは、我が国憲法が世界に誇る「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」の原則を脅かす、制定以降、最も危うい政治状況と言わざるを得ません。

しかしながら、私たちはこうした状況を跳ね返し、平和憲法を守り抜き、世界で唯一の被爆国として、我が国と同じ惨状を経験する国が未来永劫あってはならないことを、求め続けなければなりません。「ノーモア広島」「ノーモア長崎」そして「ノーモア福島」を叫び続け、子どもたち、孫たち、さらにはひ孫たちの時代に、核のない今よりもっと平和な地球を引継がなければなりません。

結びに、「被爆七十七周年原水爆禁止山形県平和大会」に結集されました仲間の皆様方のご活躍によりまして、一日も早く核のない平和な地球になりますことを、心より強くご祈念申し上げまして、立憲民主党山形県総支部連合会を代表致しましてのご挨拶とさせて頂きます。

 令和四年七月二十三日 立憲民主党山形県総支部連合会 石黒 覚  

2022年6月定例会◆代表質問◆6月7日

 県政クラブの石黒覚でございます。先日、新型コロナウイルス感染症発症以来、初めて「やまぎん県民ホール」にて、佐渡(さど)(ゆたか)指揮、反田(そりた)(きょう)(へい)ピアノ、新日本フィルハーモニー交響楽団50周年記念演奏会を聴くことができました。2時間、感動に震えながら、人が生きていく上でなくてはならないものの一つに、心震える芸術や文化、スポーツ、大好きな趣味や学びが欠かせないことを、改めて深く考えたところでございます。コロナ禍で疲弊しきった生活から、普通の生活ができるようになり、人の心の栄養が自由に取れる日が、一日も早く来るように人類の英知を結集しなければならないと、強く思った次第でございます。

 戦争をすることなど、許されないし、そんなことをしている時ではないのです。世界中の子供たちが、笑顔で歌い、グランドを走り、学び、家族と平和に暮らすことができる社会を、そして山形県を創るために、大いなる英知の結集で、本県の未来を切り拓いていかなければならないことを、肝に銘じながら、質問に入りたいと存じます。

【質 問】

1 沖縄復帰50周年と本県戦没者慰霊等について 

 沖縄が返還されたのは、1972年、昭和47年5月15日、太平洋戦争終戦から27年目のことでございました。今年は沖縄復帰から50年目の年となります。

 太平洋戦争最後の激戦地沖縄は、戦争など二度とあってはならないことを後世に伝えるには、あまりにも悲惨で、あまりにも多くの尊い命を犠牲にしたものと、改めまして全ての犠牲者に衷心より深く哀悼の誠を、そして戦後もその惨状を記憶に抱えながら生き続けてこられた方々に、ご心中をお察し申し上げる次第でございます。

 さて、先般、地元紙の特集記事でも触れられておりましたが、沖縄県と本県とは、実に深くかかわってきたご縁がある訳でございます。明治14年に第2代沖縄県令につかれた、米沢藩最後の藩主上杉(もち)(のり)県令は、志ある若者を東京に送り県費で学ばせる制度を創設し、この教育施策は後の沖縄に大きな実を結び現在に至ると言われています。こうした(もち)(のり)の施策を背景に、ほぼ私と同年代の米沢市の金城(きんじょう)利彦(としひこ)医師は、仙台で学び沖縄に貢献された後、縁あって本県の病院で診療にあたり、公立置賜総合病院副院長も務めた方でございます。

 一方、米沢市出身の我が国を代表する建築家、伊東忠太東京帝国大学教授は、大正12年に決定した首里城取壊しの危機を回避するのに尽力されたと伝えられております。この時の伊東忠太氏と共同研究者であった鎌倉芳太郎氏の調査・研究の功績が、太平洋戦争で焼失した首里城の再建に繋がり、記憶に新しい2019年10月31日に再び焼失した首里城が再建される原動力となっていることは間違いないところでございます。

 また、米沢出身の織物研究家、田中(たなか)(とし)()氏は昭和14年から沖縄織物の調査・研究を始め、氏が残された研究成果は、戦争を経てもなお沖縄織物が見事に現在に伝えられる原点になったと言われています。

 さらには、7年前、我が国で安全保障のあり方について大きく揺れていた時に、自民党の若手国会議員が「マスコミを懲らしめるためには広告収入がなくなることが一番だ」と発言したことに対して、報道・言論の自由に対する冒涜だとして、2015年6月28日付朝刊1面に「言論(げんろん)封殺(ふうさつ)の暴挙 許すな」の見出しで、山形新聞寒河江(さがえ)浩二(こうじ)主筆・社長による緊急声明が掲載されました。琉球新報は、上杉(もち)(のり)県令による県費留学制度の1回生で、のちに社長になる太田(おおた)朝敷(ちょうふ)が創刊に関わり現在に至る新聞社でありますが、2015年当時、琉球新報会長だった富田(とみた)(じゅん)(いち)氏は「沖縄の言論は山形に救われた」と、日本新聞協会役員退任の挨拶で山形新聞の緊急声明に触れられて、大いに勇気づけられたと謝意を示されたと聞いております。

 戦後77年、沖縄復帰から50年経過した今もなお沖縄には戦争の影響が色濃く残っています。昨今、沖縄の地で遺骨が混じる土砂を採取し、埋め立て等に使用することに反対する請願等が全国的に議論され、本県議会でも継続審査になっている状況もございます。

 先に述べました本県と沖縄との深いつながりの中で、さらに言及すれば、太平洋戦争末期、山形市の霞城公園を拠点としていた陸軍歩兵第32連隊・別名「霞城連隊」は、3千名のうち9割が戦死しておりますが、連隊の最後の地は、沖縄県糸満市でありました。その地には、1965年に本県が建立した「山形の塔」並びに残った戦友たちが建立した「鎮魂の碑」があり、私も5年半前に、手を合わせる機会がありました。世界平和を願う取組みでもある本県の戦没者慰霊については、戦争の惨状を繰り返すロシアの侵略行為を許してはならない今だからこそ、その歴史の重みとともに次の世代に受け継いでいくことが重要だと考えますが、吉村知事のご所見をお伺いいたしたいと存じます。

【知事答弁】

 先の大戦では、国内外で多くの方が亡くなられました。本県出身者につきましても、3万8千余名もの方々が尊い命を失い、このうち、国内で唯一地上戦が繰り広げられた沖縄では約800名の方々が亡くなられております。

 本県では、犠牲となられた戦没者の方々を追悼するとともに、戦争の悲惨さや平和の大切さを後世に継承するため、例年、春には山形県戦没者墓地「千歳山霊苑」拝礼式を、そして、秋には山形県戦没者追悼式、また、御質問でも触れられております沖縄慰霊碑「山形の塔」での慰霊祭を挙行しているところであります。

 「山形の塔」は、沖縄及び海外諸地域で戦没された本県ゆかりの方々のご冥福をお祈りするとともに、自らの命に代えて祖国日本の平和の礎となられた戦没者の方々を永く後世に語り継ぐために建立されたものであります。沖縄の本土復帰以降、コロナ禍により昨年と一昨年は中止となりましたが、建立地であります糸満市など現地の皆様の多大なる御協力のもと、毎年慰霊祭を開催してまいりました。戦後70年にあたる平成27年には、私自身も現地に赴きまして、花を手向けて戦没者の方々を追悼するとともに、平和への思いを次の世代に継承することをお誓い申し上げてまいりました。

 終戦から既に77年の時が過ぎようとしておりますが、たとえどれほど年月が経とうとも、我が国に計り知れない犠牲を生んだ悲惨な戦争の歴史があったこと、そして、今日の平和と繁栄が戦没者の方々の尊い犠牲の上に築かれていることを、決して忘れてはならないと考えております。

 現在、既に3か月以上に及ぶロシアのウクライナ侵攻により、未来ある子供達を含め多くの尊い命が奪われております。愛する故郷を追われる人々の姿が連日のように報じられており、私も心を痛めているところであります。我が国では、先の大戦を身を以って体験された方々が次第に少なくなり、記憶の風化も懸念されるところですが、このような時代だからこそ、改めて私たちすべての県民が戦没者の方々の思いに心を寄せ、平和の尊さを深く認識することが大切だと考えております。

 戦争の無い平和な世界を希求する声がかつてなく高まっている中で、これからの山形県、そして日本の未来を担う若い世代に平和への思いを継承していくため、将来にわたって戦没者慰霊の取組みを継続してまいりますとともに、県民の皆様がいつまでも平和で安心して暮らすことができる社会を守り続けていくために、これからも最善を尽くしてまいります。

【質 問】

2 新型コロナウイルス感染症対策のこれまでの取組みと今後の方向について

 次に、新型コロナウイルス感染症のこれまでの取組みと今後の方向についてお伺いいたしたいと存じます。

 約2年半前の2019年12月に中国武漢で発症したとされる新型コロナウイルス感染症は、人類と様々なウイルスによる感染症との長い闘いの歴史を振り返っても、極めて深刻な事態を引き起こし、世界中の国々で多くの犠牲者を数える状況でございます。6月6日現在、世界229ヵ国で発生し、感染者数は5億3千万人を超え、死亡者数は6百30万人を越えました。我が国におきましては、感染者数が8百94万人を超え、死亡者数は3万人を超えています。そして、本県におきましては、感染者数が28,908人となり、死亡者数が94人となっています。

 こうした状況の中で、本県のこれまでの新型コロナウイルス感染症に対する対応は、私は総じて評価できるものであったと認識いたしております。個別の対応は申し上げませんが、吉村知事の県民の皆様方に対する発信力は、不安な日常へ少しでも安心感を届けてきたものと存じます。また、医療従事者を中心とする方々への感謝や支援体制の構築、療養施設確保への迅速な対応、さらには経済支援対策の機敏な対応など、日常生活や社会情勢の不安を少しでも取り除くことに最善策を講じてきたものと思います。

 今定例会には、総額53億6千万円の補正予算のうち、コロナ禍における原油価格・物価高騰等への対応として、45億46百万円が提案されました。また、ウィズコロナでのチャーター便受入支援など、ウィズコロナ・ポストコロナへの対応として2億52百万円、医療機関等での資機材整備に対する助成など、新型コロナウイルス感染症への対応として5億32百万円が計上されています。

国におきましては、いよいよこの6月から海外からの旅行客の受け入れなど、ウィズコロナの政策展開に大きく舵を切る方向にあるようでございます。

 吉村知事におかれましては、直近の記者会見等において、基本的感染防止対策をしっかり進めながら、経済回復へ向けた施策展開が急務との考えをお示しされたようでございます。

今回の補正予算案は、そうした考え方の上に立って提案されたものと受け止めておりますが、経済回復を目指す上でも、感染症対策をどうしていくかは非常に重要だと考えます。改めまして吉村知事の新型コロナウイルス感染症対策のこれまでの経過と今後の方向について、お伺いを申し上げたいと存じます。

【知事答弁】

県内で新型コロナウイルス感染症が初めて確認されてから2年2か月が過ぎました。この間、私は、県内の感染状況を見極め、県内経済の動向も踏まえながら、時機を逃さず、効果的に感染防止対策と経済対策を講じてきたところです。

特に感染が急拡大した局面では、県境を越える移動の自粛や営業時間短縮など、県民や事業者の皆様の日常生活や経済活動に一定の制約をお願いすることで、感染拡大の抑制に努めてまいりました。

県内第1波では県境検温、第2波では「県民泊まって元気キャンペーン」などの一時停止、従来株とアルファ株が拡大した第3波・第4波では、県独自の緊急事態宣言や市町村との合同要請を発出するとともに、デルタ株が拡大した第5波では、感染拡大防止特別集中期間を設定し、短期集中の感染防止対策を実施するなどの取組みを行ってまいりました。

また、オミクロン株が急拡大した第6波では、県内初となるまん延防止等重点措置を実施するとともに、措置終了後も、リバウンド防止特別対策やクラスター抑制重点対策に取り組んだところです。

このような取組みの結果、本県では、これまで、医療崩壊などの最悪の事態を招くことなく、全国的にも低い水準で感染拡大を抑制することができております。これもひとえに、県民の皆様や事業者の皆様の御協力、医療従事者の皆様の御尽力のおかげであり、改めて御礼を申し上げます。

今後の取組みの方向につきましては、現在の主流であるオミクロン株は、デルタ株に比べ感染性・伝播性は強いものの、入院・重症化リスクは低いとの科学的知見が得られております。県内でも同様の傾向であり、多い時には1日に100名から200名台、最近では二桁台の感染者が確認される一方で、病床使用率は低い水準で推移しており、直ちに医療提供体制がひっ迫するおそれは少ないものと捉えております。

このため、私は、クラスター抑制重点対策を終了した3月下旬から当面の間を、感染再拡大を最大限に警戒しつつ、可能な限り日常生活を取り戻す期間として位置づけております。今後も引き続き、しっかりと感染防止対策を講じながら、県内経済の早期回復に努めてまいりたいと考えております。

感染防止対策が経済対策の大前提となりますので、市町村や関係機関と連携し、対策の要となるワクチン接種の推進や、無料PCR等検査などによる陽性者の早期発見、基本的な感染防止対策や業種別ガイドライン遵守の徹底の呼びかけなど、第6波の収束に向けた取組みをしっかりと進めてまいります。

【質問】

3 コロナ禍における生活困窮者への支援について

 次に、コロナ禍における生活困窮者への支援について、お伺いいたしたいと存じます。

 新型コロナウイルス感染症が本県で初めて確認されたのは、2020年3月31日でございました。2年2ヵ月ほど経過する中で、後遺症に悩む方々の報道もございますが、コロナ禍における県民の方々の生活状況、特に、生活に困窮されている方々の現状をどのように把握され、どのような支援が行われておられるのか、改めましてお伺いをいたしておきたいと存じます。

 私の所にも、時々、苦しい生活を訴えるメールなどが届いてまいります。コロナに起因するデータについては、中々集計が難しいものだと思いますが、例えば、私の住んでいる酒田市の状況を、社会福祉協議会にお尋ねをいたしましたところ「生活自立支援センターさかた」における新規相談者数実績の状況が、平成30年度208件、令和元年度218件、令和2年度490件、令和3年度249件、となっております。単純に判断できないものと思いますが、明らかに新型コロナが発症した令和2年度は相談が倍増している状況がございます。また、生活福祉資金緊急小口資金申請状況(特例含む)をみますと、平成30年度15件、令和元年度22件、令和2年度249件となっております。こうした状況の中、令和3年度から「新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金」の制度が始まり、酒田市では令和3年度中に、延べ383件の相談等に対応しております。

 また、4月下旬、感染後の後遺症に悩まれている方々の実態調査を始められたとの報道がございました。取組みの姿勢を大いに評価いたすところですが、生活困窮者の方々の中にも、後遺症により職場に復帰できないなどの状況があるのではないでしょうか。コロナ禍が長期化する中、生活に困窮する方々の状況をどのように捉え、支援をされておられるのか、さらに今後どのような方向で支援していかなければならないとお考えか、健康福祉部長にお伺いいたします。

【健康福祉部長答弁】

 新型コロナの発生以降、外出自粛や経済活動の停滞により、飲食業や宿泊・観光事業者をはじめ、幅広い業種の事業者が売上の減少等深刻な影響を受けたこともあり、失業や休業を余儀なくされたり、業務の縮小等で収入減となった方が増加しました。

 県では、市町村や社会福祉協議会等と連携し、各地域における自立相談支援機関での相談等を通して、生活に困窮されている方の支援に努めてまいりました。県内の自立相談支援機関における新規相談件数は、令和2年度が約5,700件、令和3年度は約3,400件で、コロナ禍前である令和元年度の約2,400件と比較していずれも増加しており、県民生活へのコロナ禍の影響が大きいものであることがうかがえます。

 また、生活に困窮されている方を支援するため、市町村等と連携し、生活福祉資金の特例貸付や新型コロナウイルス感染症生活困窮者自立支援金による支援等の取組みに加え、県独自の施策として、特例貸付を受けた世帯への県産米の提供等も実施してまいりました。なお、特例貸付は、令和4年4月末までの累計で約8,500件、約34億円の貸付を決定しており、自立支援金につきましては、3月末までに約6,500万円が支給済みとなっております。

 また、新型コロナの影響に加え、今般、物価高騰等に対応した政府の総合緊急対策において生活困窮者支援策が示されたことを踏まえ、6月補正予算において、自立支援金の申請期限延長への対応に加え、独自に県産米の提供やフードバンク活動を支援するための経費を計上したところです。

 県としましては、今後も市町村等と連携し、生活困窮者に対する緊急的な支援を継続するほか、今後償還時期を迎える特例貸付に関する猶予の取扱いを政府に対し提案するなど、実状に応じた支援に努めてまいります。

【質問】


4 本県エネルギー政策の進捗状況と目標達成に向けた取組みについて

 次に、本県エネルギー政策の進捗状況と目標達成に向けた取組みについて、お伺いいたしたいと存じます。

 吉村知事は2020年8月6日に開催されました全国知事会において「ゼロカーボンやまがた2050(ニーゼロゴーゼロ)」宣言をされております。

 政府においては、2020年10月に「2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする脱炭素社会を目指す」ことを宣言するとともに、2021年4月には、  2030年度の新たな温室効果ガス排出削減目標として 2013年度比で46%削減する方針を示し、さらに50%の高みに向けて挑戦を続けていくという目標を掲げられました。

 また、2021年10月に閣議決定された第6次エネルギー基本計画において、再生可能エネルギーに関し、「主力電源として最優先の原則の下で最大限の導入に取り組む」と明記されております。今般のロシアによるウクライナ侵略のような事態も踏まえますと、エネルギー安全保障の確保の観点からも再生可能エネルギーの活用は極めて重要であることは、申し上げるまでもないところでございます。

 本県では、東日本大震災による福島第一原発事故を踏まえ吉村美栄子知事が、当時滋賀県知事でございました嘉田由紀子知事とともに「卒原発社会」の実現を目指すこととし、平成24年に「山形県エネルギー戦略」を策定し、2030年度までの再生可能エネルギーの開発目標を約100万kWと掲げ、これまで順調に推移していると認識いたしております。

 一方で、電源や熱源の種別ごとの進捗には、ばらつきが見られることも事実ではないかと考えます。

 特に庄内地域では、洋上風力発電導入の検討が進められており、昨年9月には遊佐町沖が「有望な区域」に選定され、今年1月には政府が主催する法定協議会が設置されたところでございます。再生可能エネルギーの賦存量をみると、地域によるばらつきもさることながら、太陽光、風力、地熱などの種別間のばらつきもあり、一律に開発・導入を進めるのは難しい面もあるため、各地域のポテンシャルを活かしながら取組みを進めていく必要があるものと思われます。

 本県エネルギー戦略に掲げる開発目標について、最新の進捗状況と、目標達成に向けた取組みについて、環境エネルギー部長にお伺いいたしたいと存じます。

【環境エネルギー部長答弁】

 本県では東日本大震災を契機として、平成24年3月に全国に先駆け「山形県エネルギー戦略」を策定し、20年後の令和12年度までに本県の目指すべき姿の一つに「再生可能エネルギーの供給基地化」を掲げ、再エネ資源を活用した新たな電源の開発を積極的に進めてまいりました。この結果、令和12年度末までの再エネの開発目標101.5万kWに対する令和2年度末の導入実績は、58万kW、目標の57.1%となり、また、令和3年度末については現在公表に向けた精査を行っておりますけれども、目標の約65%程度まで進捗する見込みとなっており、全体としては概ね順調に推移しているものと認識しております。

 県内の豊富な森林資源を活用したバイオマス発電や庄内地域の良好な風況を活用した風力発電など、これまで地域ごとの特性を活かして導入を進めてきておりますが、エネルギー種別毎に見ると、太陽光やバイオマス発電が順調である一方、風力や地熱発電は低調で、種別毎のバランスの取れた導入促進が課題となっております。

 このため、開発目標達成に向けては、今後、大規模な導入が期待できる洋上風力発電をはじめとした大規模事業の県内展開に加え、既存の温泉資源に配慮した技術を活用する地熱発電、陸上風力や中小水力発電など、県内各地に豊かに賦存する多様な再生エネルギーを最大限に活かした取組みを更に促進してまいります。

 また、最近の資源・エネルギー価格高騰の影響など、エネルギーを取り巻く環境が大きく変化する中で再エネへの期待がより一層高まっております。このため、こうした情勢の変化や開発目標の進捗状況、更には、カーボンニュートラル時代を見据え新たな資源として位置付けられている水素の社会実装や、蓄電池やEV等の分散型エネルギー資源の有効活用などを念頭に、来年度予定している「後期エネルギー政策推進プログラム」の見直しに適切に反映させて、再エネ導入拡大に向けてしっかりと取組みを進めてまいります。

【質問】


5 持続可能な地域医療体制を確保するための地域医療構想の推進について

 次に、持続可能な地域医療体制を確保するための地域医療構想の推進についてお伺いいたしたいと存じます。

 地域医療構想については、医療機関を中心に新型コロナの感染症への対応に全力を注いでいるため、実質的な議論が停滞している状況となっていましたが、令和4年3月に厚生労働省からコロナ禍においても構想の実現に向けた取組みを進めるよう通知されたところでございます。

 同時に、総務省からも公立病院経営強化の推進について通知され、「持続可能な地域医療提供体制を確保するための公立病院経営強化ガイドライン」が示されました。

 当ガイドラインを解説している記事によりますと、公立病院経営強化の必要性について、最大のポイントは、従前のガイドラインが「赤字解消」を主目的とする消極的な内容であったのに対し、「経営力強化」「機能強化」を目指す積極的な内容であるとされております。これまでも、公立病院は再編・ネットワーク化、経営形態の見直しなどに取り組んできましたが、医師・看護師等の不足、人口減少・少子高齢化に伴う医療需要の変化により、依然として、持続可能な経営を確保しきれない病院も多いとされています。また、コロナ対応に公立病院が中核的な役割を果たし、感染症拡大時における公立病院の果たす役割の重要性が強調されているようであります。

 そして、このガイドラインに沿った地方公共団体における公立病院経営強化プランは、令和4年度又は令和5年度中に策定し、期間を策定年度又はその次年度から令和9年度を標準とするとあります。「団塊の世代」が75歳以上の後期高齢者となり、医療需要が大きく変化する2025年問題が深刻に受けとめられ平成26年に「医療介護総合確保推進法」が成立しましたが、その目指すべき2025年まであと3年という現在、我が国における持続可能な地域医療提供体制の確保は、待ったなしの状況でございます。

 「公立病院経営強化プランに求められる内容」は、①役割・機能の最適化と連携の強化 ②医師・看護師等の確保と働き方改革 ③経営形態の見直し ④新興感染症の感染拡大時に備えた平時からの取組み ⑤施設・設備の最適化 ⑥経営の効率化 とあります。

 さらには、「都道府県の役割・責任の強化」では、都道府県が、市町村のプラン策定や公立病院の施設の新設・建替等にあたり、地域医療構想との整合性等について積極的に助言とあり、医療資源が比較的充実した都道府県病院等が、中小規模の公立病院等との連携・支援を強化していくことが重要としております。

 県は、置賜広域病院企業団や地方独立行政法人山形県・酒田市病院機構の構成団体の一員であり、加えて病院等への指導助言を担うという重大な役割を果たしていかなければなりません。同時に、県立病院の「資金不足等解消計画」に基づく経営改善も進めなければなりません。

 こうした状況の中で、「公立病院経営強化プラン」の策定にあたりましては、まず重要になるのは進行中の「第7次山形県保健医療計画」や「山形県地域医療構想」等、県の各種の計画、施策と整合性を図りながら、特に山形県地域医療構想についてこれまでの取組みに対する評価を、まずしっかりすることが重要と考えます。また、県内4地域に設置されている地域医療構想調整会議等においては、現場の実態や声をより一層反映させることが必要であり、日本海総合病院を核とした地域医療連携推進法人日本海ヘルスケアネットの先駆的取組みが、政府や都道府県の医療関係者から注目されていることも参考にしながら、地域医療構想の実現に向けた取組みを進めていく必要があると考えます。今後の地域医療構想の推進に向けた考え方について、健康福祉部長にお伺いいたしたいと存じます。

【健康福祉部長答弁】

 県では4つの二次医療圏ごとに地域医療構想調整会議を設置し、関係者の皆様と協議しながら、地域医療構想に示した目指すべき医療提供体制の実現に向けた取組みを進めております。

 これにより、病床機能ごとの病床数につきましては、構想策定時である平成28年9月と令和3年12月時点を比較すると、回復期病床への転換等により急性期病床は829床減少した一方で、回復期は603床増加するなど、一定の成果が上がっているものと認識しております。

 一方、今般、総務省から新たに示された公立病院経営強化ガイドラインにおいては、病院同士の再編・統合を中心とする従来の考え方から、病院間の役割分担や医師派遣等による連携強化を重視する考え方への見直しも示されているところです。

 これらの動きを踏まえ、今後は、各地域の基幹病院に急性期機能を集約し、それ以外の病院等は回復期機能を中心に担うなど、その役割分担を明確化するとともに、基幹病院からの医師や看護師等の派遣など、日本海ヘルスケアネットの取組事例のような、医療資源を有効活用し地域全体で連携する医療提供体制の構築について、地域医療構想調整会議等で協議していく必要があると考えております。加えて、この医療提供体制を実現するためには、今後、病院を設置する地方公共団体が策定する「公立病院経営強化プラン」と地域医療構想との整合性の確保が大変重要となります。県としましては、各病院の経営強化プランが、地域で果たすべき役割や機能を適切に評価・認識し、地域医療構想に沿ったものとなっているかといった観点から、地域医療構想調整会議等において積極的に助言を行いながら、協議を進めてまいりたいと考えております。

 持続可能な医療提供体制の確保に向けて、今後も地域医療構想の進捗状況や課題などに関する情報共有に努め、各地域での積極的な議論を促しながら、地域と一体となって取り組んでまいります。

【質問】

6 水道事業について

 (1) 「水道広域化推進プラン」策定の進捗状況と見通しについて

次に、水道事業についてお伺いいたしたいと存じます。

 まず1点目は、水道広域化推進プラン策定の進捗状況と見通しについてでございます。

 私も、これまで何度となくお尋ねを申し上げて参りましたが、中々難しい課題が多くあり、大変ご苦労をされているものと推察いたします。

 本県では、2018年3月に策定されました『山形県水道ビジョン』におきまして、「人口減少等の課題に対応しながら、県民への安全で安心な水を安定的に届け続ける山形の水道」と示されているように、命の源であります「水」を供給する事業者として、県民皆様方からご負担を頂く「水道料金」をできるだけ低価格でお届けすることも極めて重要な使命であると考えます。

 2018年には、この年の通常国会で「人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の直面する課題に対応し、水道の基盤の強化を図るため、責務の明確化として、都道府県は水道事業者又は水道用水供給事業者の間の広域的な連携を推進するように努める」とした水道法の改正がなされました。

 総務省が公表しました、令和3年11月30日時点での各都道府県における「水道広域化推進プラン」の策定取組状況をまとめた資料によりますと、既に策定済みの5団体を除く42団体のうち、進捗を示す3つの指標、即ち、「A現状把握」、「B将来見通し」、「C広域化シミュレーション」の全てが完了しているのは3県だけとなっており、本県はそのうちの1県になっております。関係各部署のご努力に敬意を申し上げる次第でございます。

 「水道広域化推進プラン」については、平成31年1月に、総務省並びに厚生労働省から、当時は平成34年度末まで、元号が変わりましたので本年度、令和4年度中に策定するようにとの通知がなされたと記憶いたしております。まさに佳境に入っているものと存じます。「水道広域化推進プラン」には水平・垂直統合等を含む、ブロックごとの工程並びに時期などについても記載されていくものと思いますが、現在の検討状況や進捗について、防災くらし安心部長にお伺いいたしたいと存じます。

【防災くらし安心部長答弁】

 本県の水道事業は、経営基盤が脆弱な小規模事業者が多いことに加え、今後の人口や水需要の減少等により水道事業の経営が一段と厳しくなることが予想されております。

 こうした課題は全国でも共通であり、政府では、経営統合や施設の共同設置、事務の広域的処理等の多様な広域化を推進するため、都道府県を「広域連携の推進役」と位置づけ、令和4年度までに「水道広域化推進プラン」の策定を要請しているところであります。

 「水道広域化推進プラン」には、①水道事業者ごとの経営環境と経営状況に係る現状と将来の見通し、②広域化のパターンごとに将来見通しのシミュレーションと広域化の効果、③今後の広域化に係る推進方針等を記載することとなっており、本県では、県、市町村等の水道事業者、並びに水道用水供給事業者である県企業局で構成する「山形県水道事業広域連携検討会」を県内4地域で立ち上げ、検討を行っております。

 検討会では、経営環境等の将来の見通しとして、急激な人口減少や水需要の減少に伴う料金収入の減少、水道施設の更新費用の増大、水道職員数の減少等を推計・想定し、課題解決のため県内4地域ごとに、広域連携シミュレーションを実施しています。

 その結果、施設の共同利用、資機材の共同購入、広域化による一体的な経営など、それぞれの地域での有効な広域連携の姿や課題が見えてきており、現在、こうした結果についてさらに精緻化を図っているところであります。また、費用削減効果だけでなく、費用に現れない安全性、災害対応、人材育成と技術継承等、多角的な観点から比較検証を行っているところであります。

 県といたしましては、県内4地域の検討会でこうした議論をしっかりと行い、今年度中に「水道広域化推進プラン」を策定したいと考えております。

 (2) 酒田工業用水道の塩水遡上対策の現状と今後の対応について企業管理者

 2点目は、酒田工業用水道の塩水遡上対策の現状と今後の対応について、お伺いいたしたいと存じます。

 さる4月中旬に、酒田にあります企業の前社長様とお会いして、様々なお話をお聞きする機会がございました。

 1985年に設立された当企業は、現在2000名を超える社員を有する、本県では数少ない大企業の一つでございます。

 酒田工業用水道の大口受水企業でもあり、酒田工業用水道を利用いただく30社の企業のうち、半導体を扱う当企業様と苛性ソーダをはじめとする基礎科学製品を製造する企業様の2社で概ね過半の利用をいただいていると聞いております。この2社においては、製品を製造する際に使用する工業用水道に塩分が混じることがあると、生産に影響が生ずるともお聞きしております。しかしながら、近年の気候変動や河川の土砂堆積などの影響で、酒田工業用水道の最上川取水口において、2018年、塩水が遡上し、工業用水の塩分濃度が上昇したことにより、大口受水企業では操業を停止した例もみられたところであります。先ほど申し上げました企業の前社長様との面談では、塩水遡上の緊急対応策の一つとして、上水道でバックアップすることも可能ではないかとのご指摘を頂きました。

 上水道を利用するとなれば、地元の水道事業者である酒田市にも対応が求められてまいります。塩水遡上に伴う企業活動への影響を最小化していくためには、ご指摘の対応策のように多角的な視点から、関係する様々な機関と連携した対応が重要になるものと考えます。

 そこで、県企業局は、これまで酒田工業用水道における塩水遡上に対する対策としてどのように対応してこられたのか、そして今後どのように対策を講じていかれようとしているのか、企業管理者にお伺いいたしたいと存じます。

【企業管理者答弁】

 酒田工業用水道は、昭和37年に市内大浜地区で給水を開始し、現在は酒田市と遊佐町の29事業所に用水を供給しております。

 この工業用水の原水は最上川の河口から8.3キロ上流の地点で取水していますが、これまで平成27年と平成30年の2回、取水口までの塩水遡上が確認されております。気候変動に伴う河川流量の減少や河川環境の変化などが原因と考えられますが、塩水が工業用水に入り込むと、電気の通し易さを示す導電率が急激に上昇し、企業によっては操業に支障が生じます。

 このため、河川流量が減少する時期には、取水口から下流域にかけて塩水遡上状況のモニタリングを1日2回実施し、受水企業に適時情報提供するとともに、取水口までの塩水遡上が予想される場合は、応急対策として取水口の800m上流に取水ポンプを仮設し、受水企業に影響が及ばないよう可能な限りの対応を講じております。

 しかしながら、毎年のように塩水遡上が発生しており、年によっては仮設の取水地点まで遡上することもあり、恒久的な対策が必要になっております。これまで「灌漑排水を利用する案」や「取水口を上流に移設する案」などを検討し、こうした対策の内容について、受水企業に対し定期的なユーザー会議で説明し、意見の聴取などに努めております。しかし、使途や使用水量の違いなどから、受水企業の水質に対するニーズが一様でないことや、多額の工事費に伴う費用負担の考え方も様々なうえ、水利権の調整が現状では困難なことから、いずれも実施が難しい状況にあります。

 工業用水の安定供給は立地環境に係わる重要なインフラ条件であるとの認識のもと、当面はモニタリングの精度を上げながら、企業活動に影響を及ぼさないよう応急対策に万全を期してまいります。併せて、水利権の調整や河川環境の改善に向けて河川管理者との協議を引き続き進めるとともに、受水企業の理解が得られるよう、有効性と経済性が両立する新たな恒久対策についても検討を進めてまいります。

【質問】

7 誘致企業に対するフォローアップについて

次に、誘致企業に対するフォローアップについてお伺いいたしたいと存じます。

地元庄内の誘致企業の経営者と意見交換した際に、企業として抱える課題についてもお聞きすることができました。その中で、いくつか気になる点がございましたので、お伺いいたすものでございます。

 大企業、中小企業問わず、世界経済状況の変化、そしてコロナがもたらした変化が、企業経営に大きな影響を及ぼしたことは言うまでもありませんが、その経営者の企業が誘致を働きかけられた当時は、好条件で行政からの誘致があったそうです。しかし、操業以来の経過・社会情勢の変化の中で、様々な課題が発生したり、近年では人口減少も相まって「人」が集まらないという課題があるそうです。100人規模で雇用したい計画があるにも関わらず、庄内地域において雇用確保が極めて厳しい状況だということでございました。他県においては、企業が行政の支援を受けて事業や雇用を拡大するなど積極的な投資を進めている例があるようでございます。都道府県や市町村の企業支援にどのような違いがあるのか、私には中々実態を把握することは、困難なところであります。

山形県においても、例えば、大企業、中小企業に関わらず、的確な企業振興策を進めるためには、県内企業の状況調査はもちろん行われていると認識いたしますし、様々な企業との協議の場や意見交換の場などは数えきれないほどあるものと思いますが、企業が抱える課題や必要な支援等は様々であり、時の経済情勢によっても変わってくるものと考えます。県では、40年、50年前の高度成長期に誘致された企業が立地後、どのような課題を抱えているかなど、細やかな把握はどのような形で行われているのでしょうか。   

近年は、新規起業や創業等のスタート支援に重点が置かれているように感じますが、これまでに誘致された企業の状況把握や支援等はどのようになっておられるのか、今後の雇用確保策も含め、産業労働部長にお伺いいたしておきたいと存じます。

【産業労働部長答弁】

 誘致企業は、県が本県産業の発展・成長を目指すうえで是非とも必要な企業と判断し、様々な支援を提案しながら、幾度となく交渉した結果、山形県を信頼して進出を決断した企業であり、その信頼・決断に対しては、県としてもしっかりと応えていく必要があると考えております。

 誘致企業が本県に進出し、事業活動を展開していく中では、事業の拡大、雇用の確保といった様々な課題に関連して、県に対する提案・要望等も生じてまいります。このような誘致企業の実情に対応するため、県と誘致企業等で組織する 「山形県新企業懇話会」を設置しており、これまでも緊密に意見交換を行いながら、誘致企業の課題や要望等に最大限応えられるよう、関係機関とも連携・協力しながら親身に対応しているところです。加えて、企業誘致の担当職員が誘致企業に直接出向いて、随時、要望や意見等を伺っているほか、県外事務所と連携して、誘致企業の本社を訪問して意見交換を行うなど、きめ細かなフォローアップを行っております。

 誘致企業に対する支援につきましては、県の様々な産業振興に係る支援制度を活用いただくとともに、増設等の新たな投資を行う場合には、一定の要件のもと企業立地促進補助金の対象としております。また、雇用の確保についても、県が行う雇用確保対策に加え、新企業懇話会の事業として、県内大学等との交流会や高等学校の就職担当者を対象にした企業見学会を開催しており、今後とも雇用確保が図られるよう企業の意見や要望等もお聞きしながら、必要な事業を行ってまいります。

 企業誘致の基本は、相手企業との顔の見える関係づくりであります。誘致後も互いに顔の見える良好な関係をしっかりと築き、本県への進出を決断して本当に良かったと思っていただけるよう、誘致企業と山形県の相互の発展に向けて全力で取り組んでまいります。

【質問】

8 建設資材価格の高騰による公共事業等への影響と円滑な執行に向けた対応について

最後に、ウクライナ情勢を巡るロシアへの経済制裁などにより原油やガスといったエネルギー価格の高騰だけでなく、食品全般や飼料、建設資材など業界を問わず多種多様な分野で影響が広がっています。このような影響が広がることにより、コロナ禍からの経済社会活動の回復の足取りが大きく阻害されかねない中で、政府においても「コロナ禍における『原油価格・物価高騰等総合緊急対策』」を決定するなど、コロナ禍からの経済社会活動の回復を確かなものとするべく、今後は、実行の段階に移っていくものと思われます。

一方で、建設資材価格の高騰により、本県公共工事への影響が大いにあるのではないかと懸念しております。具体的には、道路や橋梁の整備・老朽化対策・予防保全工事など様々な社会資本の整備、機能維持に関する工事が、今回の価格の高騰と新型コロナウイルス感染拡大の影響に伴う物流の停滞により、事業の進捗、効果の発現にも多大な影響を及ぼす、あるいは、既に影響を及ぼしているのではないかという懸念でございます。

社会資本の整備は、我が県の発展になくてはならないものであり、老朽化対策などの機能維持も、県民の安全安心な暮らしに欠かせないものであります。今回の建設資材の価格高騰は、建設業界や公共事業にどのような影響をもたらしているのか、また、現在予定している公共事業を円滑に執行していくために、どのような対応策を講じているのか、県土整備部長にお伺いいたしまして代表質問とさせて頂きます。ありがとうございました。

【県土整備部長答弁】

 建設資材価格については、今年4月の資材価格を昨年同月と比較しますと、燃油や鋼材類が概ね2割から3割の上昇となっております。事業者からは、今後の価格動向や一部資材の納期遅延などについて、不安や懸念の声をお聞きしているところです。

 建設資材価格の高騰は、公共工事受注者の持続的な経営に影響を与えるとともに、県民の暮らしや産業を支える社会資本整備の遅れに繋がることも危惧されます。

 このような状況に対応するため、県では、主に三つの観点から建設資材価格高騰への対応策を講じているところであります。

 一つ目は、実勢価格を反映した、きめ細やかな設計単価の設定であります。設計単価は、通常、年4回、その時々の実勢価格を反映した単価に改定しておりますが、今般のような急激な建設資材価格の変動が確認される場合には、臨時の設計単価改定を行い、直近の価格動向を反映してまいります。

 二つ目は、工事受注後の建設資材高騰に対する変更契約の対応です。公共工事の契約約款では、急激な価格変動等に伴い請負代金が不適当となった場合の変更の規定、いわゆるスライド条項を定めております。この条項に基づき、適切に変更契約を行ってまいります。

 今月1日からは、各総合支庁へ県土整備部所管工事に関する「スライド相談窓口」を設置し、受注者からの相談に応じる体制を整えております。これらの取組みを建設関連団体や市町村などに広く周知し、円滑なスライド条項の適用に繋げてまいります。

 三つ目は、柔軟な工期の運用です。工事期間中の資材の納期遅延等、受注者の(せき)によらない工期不足の発生が予測される場合は、適切に工期を延長してまいります。

 これらの取組みにより、安心して受注できる環境を整え、本県の発展を支える社会資本の着実な整備を推進してまいります。