2月定例議会◆石黒覚予算質疑◆

《2月定例会予算特別委員会3月8日》石黒覚質問要旨

《前置き》

おはようございます。県政クラブの石黒覚でございます。 

まずは、先の知事選におきまして、県民の大きなご信任を賜り4期目の当選を果たされ、困難な時代を切り拓いていく極めて重要なかじ取り役に就かれました「吉村美栄子知事」に、改めまして心よりの祝意とエールを申し上げたいと存じます。「106万県民の命と生活を守る」ために、3期12年間にわたる着実な実績と、深い経験に基づく先見性に裏打ちされた決断、そして知事就任以来一貫して「心の通うあったかい県政」を進められ、幾多の厳しい困難が立ちはだかる今日の「山形県政」に果敢に挑み続けていただきたいと強く願うものでございます。そのためには、私たち議会もその進む方向が、常に「県民益」に叶うものであるための議論を深め、車の両輪としての責務を果たしていかなければならないことを、改めて肝に銘ずるものでございます。

《質問》

1 副知事の選任について

今定例会開会日に、吉村知事の所信を含む提出議案に係る知事説明がございました。この中でも触れられていたと存じますが、この度の知事選挙におきまして、山形県民の皆様方は、「本県の今」を、どのように受け止め、本県の向かうべき方向はどのようにあるべきか、について明確なご判断を下されたものと、私は受け止めております。

 吉村知事は、先の代表質問において、新型コロナの感染拡大防止と経済回復の両立を県政の最優先課題としながら、ポストコロナの社会、山形の未来を見据え、急速なデジタル化の進行や東京一極型集中から分散型社会への流れなど、大きな社会経済情勢の変化への対応、さらには、若者の県内定着促進や頻発・激甚化する自然災害への対策など、山積する課題に対し、全力で取り組むと答弁されました。

 私たち地球に生きる人類が、今まさに新型コロナウイルス感染症という敵と闘い続けている中で、国や地方における政治の果たさなければならない役割は、徹底した議論の先に、「国民、県民の命と生活を守る政策」を一刻の停滞もさせることなく進めることだと、私は考えます。

 現時点では議案の撤回という状況になっておりますが、県の事務方のトップである副知事が不在という状態になれば、また、副知事が新しい方に交代したとしても、県政は必ず停滞することになります。そこで、「若松副知事再任」という副知事の選任についての考え方を、県議会並びに県民の皆様方にお示しいただきたいと存じます。

 人事案件で質問質疑等が交わされた経過があったものなのか、議事録を調べてみました。少し長くなりますが、4年前の2月定例会で、自民党会派の田澤議員が代表質問で、副知事選任についてお尋ねをされておりました。前略中略をお許しいただきまして、少し紹介させていただきますと、『現在は、自治体の財政難、高齢化の中での生産年齢人口の減少、さらには国外の動きが直接地方にも影響を与えるグローバル化の中にあり、誰が知事に就任したとしても、舵取りの難しい時代です。そんな環境下でも、知事には、県勢発展のため全力を尽くしていただきたいと思います。二元代表制のもと、(略)時には両者の意見が相違する場合もあります。しかし、粘り強く議論を重ね、異なる意見を集約していくのが言論の府としての議会の役割であります。合意を見たとき、議会・行政が主権者たる県民のために力を合わせて合意内容を実行に移す時であります。我々自民党会派は、以前から県民の視点に立ち知事の県政運営を検証し、県民のためになるかどうかを基準に是々非々で対応してまいりました。(中略)若松企業管理者は公務員のかがみのような人ですが、新しい副知事にどのような役割を期待して人選されたのかお尋ねいたします。』と、質問されたものでございます。尊敬する田澤議員ならではの、考えられたご質問であったと記憶しております。

人事案件というものは、個人の人格も含めて判断する極めて繊細なものであることは、申し上げるまでもないところでございます。しかしながら、コロナ禍という今を生きる県民の皆様が、心を一つにコロナと闘い、次の時代を生きていく子供たちにもっと輝く山形を引継ぐためには、吉村美栄子知事を支え続けてこられた若松副知事のお力は、計り知れないものがあると、私は強く思うところでございます。

 若松副知事にどのような役割を期待いたしてご提案されたのか、改めまして吉村知事にお伺いいたしたいと存じます。

《答弁:知事》

 最初に、若松副知事には、私の補佐役として、3期目の県政運営全般にわたって大いに力を発揮していただき、深く感謝しております。

 先日髙橋淳委員へお答えしましたとおり、現在の県政は新型コロナ対策と経済再生の両立をはじめ、豪雨、豪雪、地震など相次ぐ自然災害への対応など喫緊の大きな課題をいくつも抱えております。また、本県でも新型コロナのワクチン接種がいよいよ始まり、これから本格化していく状況の中で、県政の停滞は決して許されないものと認識しております。

 このように、まさに有事とも言える状況の中で、私の補佐役であるとともに、庁内の総合調整役を担う副知事が不在となれば、部局間連携の調整や県民の期待に応える各種施策の迅速な意思決定に大きな支障が生じることが懸念されます。また、私の業務遂行においても、リスク管理上、県庁を留守にすることが出来ず、かなり制約されることになる。また、現在ご審議いただいている令和3年度当初予算においても、新型コロナ対策と経済再生の両立をはじめ、故郷(ふるさと)やまがたの輝かしい未来の実現に向けた様々な施策を盛り込んでおり、県民ニーズを的確にとらえながら、私と副知事が先頭に立って、全庁を挙げて積極果敢に取り組んでいく必要があります。

4年前に副知事に就任して以降、常に私を補佐し、群を抜いた現場感覚の下、特に、新型コロナ対策・経済再生などあらゆる施策に二人三脚で取り組んできた若松副知事は、余人をもって代えがたい人物であります。県民が一丸となってこの難局を乗り越えるためには、現在の体制を継続することが何よりも重要と考えており、引き続き若松副知事には、私の4期目の県政運営全般を支えていただき、喫緊の課題である新型コロナ克服・経済再生をはじめ、県勢発展に向けた各種施策の展開に大いに手腕を振るっていただきたいと考えております。

《質問》

2 コロナ禍における病院経営の状況等について

それでは初めに、これまでも多くの質疑・質問がなされております新型コロナウイルス感染症に関する点について、お伺いいたしたいと存じます。昨年2月27日、第15回新型コロナウイルス感染症対策本部において、安倍前総理が突如「全国全ての小学校、中学校、高等学校、特別支援学校について、来週3月2日から春休みまで臨時休業を行うよう要請した」と発表。あの日から1年が過ぎました。これまで世界全体で113,415,000人を超える感染者で、2,517,000人を超える死者を数えます。お亡くなりになりましたすべての方々へ、改めまして心よりのご冥福を申し上げますとともに、現在も治療中、後遺症等に悩まされております皆様方にお見舞いを申し上げる次第でございます。さらには、不眠不休の対応を続けていただいております医療関係従事者をはじめとする多くの皆様方に、改めまして衷心より敬意と感謝を申し上げたいと存じます。

グローバル化した世界の中で医学の進歩が目覚ましい現代社会と単純な比較はできませんが、1918年に世界中で4000万人もの死者を出した「スペイン風邪」を彷彿させる状況と言わざるを得ないものでございます。

一方、本県における新型コロナウイルス感染症の状況は、吉村知事を先頭にする本県対策本部の懸命な対応と、県民皆様方の感染防止対策への理解と取組みにより、拡大の水準を低く抑えているものと、評価いたすところでございます。

こうした中で、県立病院並びに県が運営に参画する病院の経営状況についてお伺いいたしたいと存じます。

(1) コロナ対応による県立病院の経営状況について

 まず初めに、コロナ対応による県立病院の経営状況についてお伺いいたします。

 これまで全国的な状況として、新型コロナウイルス感染症患者受入れ医療機関が、誹謗中傷にさらされたり、一般診療患者の診療控えが拡大したり、コロナ患者対応により療崩壊寸前など、受入れの最前線である医療機関が、経営を含めて危機的状況であるとの報道が続いてきました。

 本県では2月28日現在、感染者数543人、入院中のが14人、退院等が517人、死亡の方が15人となっております。2月19日に示された今年度の2月補正予算案の内容が、各県立病院の現状を踏まえた病院事業における現時点の決算見込みと認識いたしておりますが、今年度、各県立病院におきまして、新型コロナウイルス感染症患者受入れによる医業収益に対する影響は、どのような状況であったのか。また、その影響により来年度の経営をどのように見込んでいるのか、病院事業管理者にお伺いいたします。

《答弁:病院事業管理者》

各県立病院は、新型コロナ感染症から県民の命を守るため総力を挙げて取り組んでまいりました。まず、感染症指定医療機関である3病院に、発熱などの症状がある患者さんや感染者の濃厚接触者の診察とPCR検査の検体採取を行うため、新型コロナ感染症外来の診察室を設置しました。その後、新型コロナ感染者が県内で発生して以降は、中央病院及び新庄病院に、感染患者の専用病床を設けました。また、新型コロナ感染患者の治療に従事する医療スタッフと資器材を確保するとともに、院内感染を未然に防止するため、救急患者の受入れを制限したり、人間ドックや内視鏡による精密検査を中止するなど通常の診療体制を縮小しました。

 こうした新型コロナ感染患者への対応に加えて、一般の患者さん自身のいわゆる『受診控え』もあり、今年度の県立病院の患者延数は大きく減少しております。その具体的な影響を申し上げます。まず、本年4、5月の2か月間の県立4病院合計の入院患者延数は、前年同期比で22.7%減、外来患者延数は同じく25.5%減となりました。6月以降、感染状況の落着きに伴い、患者数も徐々に回復しましたが、その後、12月に県内でクラスターが発生するなど再度の感染者の増加によって再び患者数が減少し、1月末における入院患者延数は前年度同期比14.1%減、外来患者延数は同じく14.5%減となりました。患者一人当たりの診療単価こそ入院、外来とも前年度より上昇したものの、患者延数減の影響は大きく、今年度1月までの医業収益は、前年度同期比で27億8,503万5千円、率にして10.6%の減になりました。今年度の医業収益については、本県における新型コロナの感染状況等を踏まえて随時補正してきたところであり、最終的な見込みとして今議会に提案しました2月補正予算では、当初予算を 46億4,312万7千円下回る、278億6,579万4千円とせざるを得なかったところです。以上を踏まえ、令和3年度については、新型コロナ感染者の一定程度の発生を見込むほか、コロナ専用病床確保による入院患者の減少や、受診控えによる外来患者の減少など、今年度に引き続いて、新型コロナの影響があるものと考えております。その一方で、現在準備が進められているワクチン接種の効果も期待できますので、患者延数は今年度よりは回復すると想定し、令和3年度当初予算における医業収益は、2月補正後との対比で9.3%増の304億4,603万5千円と見込んでいるところです。

《質問》

(2) コロナ禍による資金不足等解消計画等への影響について

 昨年6月定例会におきまして、病院等に対する国としての支援が定まらない中で、本県独自の支援策として、新型コロナウイルス感染症の影響により、減収が生じている県立病院、公立置賜総合病院、日本海総合病院に対して、独自の支援策を講ずる提案があり可決されました。その後、医療機関に対して国の支援は順次拡充され、こうした病院への支援策として特別減収対策企業債の制度が創設されました。2月補正予算案では、県立病院における減収については、この特別減収対策企業債をもって対応すると聞いておりますが、特別減収対策企業債には、どのような国の支援があるのか、併せまして、国の空床補償はどの程度の規模になる見込みなのか、現時点における試算がございましたらお伺いいたしたいと思います。

 以前決算総括質疑において、病院事業の資金不足比率についてお尋ねをいたしたことがございます。平成29年度に経営状態の悪化の度合いを示す資金不足比率が12.1%となり、10%以上となったことから、地方財政法の規定に基づき、企業債発行に際し総務大臣の許可を受けるため「資金不足等解消計画」が策定されています。今回のコロナ禍による影響が資金不足の解消にどのような影響があると考えているのかも併せて病院事業管理者にお伺いいたします。

《答弁:病院事業管理者》

 新型コロナ感染者が国内で確認されて以降、全国の新型コロナの入院診療にあたる医療機関では、感染拡大防止等のために講じた診療体制の縮小や受診控え等による患者数の減に加え、コロナ専用病床を確保する必要があったことにより、医業収益が大幅に減少しております。これら医療機関に対する政府の支援については、6月補正の時点では十分なものが見込めなかったので、本県では、足らざるところについて、一般会計から県立病院に対する減収補填の予算措置を講じていただいたところです。その後、知事が全国知事会などの機会を捉えて、幾度も要請を行い、医療機関に対する政府の支援は数次にわたり拡充されたところであります。その結果、専用病床を確保した病院に対する空床補償については、病床1床・1日当たり一律1万6千円とされた当初の補助単価は、ICUなどの病床の種類に応じた区分を設けたうえで、最小1万6千円から最大43万6千円までに引き上げられたほか、補償の対象もコロナ専用病床に加えて、新型コロナ感染患者を担当する看護師の確保等のために休止した病床も対象となりました。

 県立病院では、通常の医療と新型コロナ感染患者の治療を両立させるため、県内の感染状況に応じて専用病床の確保もフレキシブルに行い、中央病院では最大で101床が空床補償の対象となりました。その結果、県立病院全体の1月分までの空床補償は、26億2,409万4千円を見込んでいるところです。また、公立病院に対する政府の支援として、新型コロナの影響により拡大した資金不足額を限度とする資金手当てのための特別減収対策企業債の制度が創設され、償還利子の一部に対して特別交付税措置が講じられることとなりました。この度の2月補正においては、これを活用することとし、一般会計からの減収補填 21億5,412万8千円を全額減額した上で、特別減収対策企業債10億9,560万円を発行することとしたところです。

 病院事業会計では、平成29年度決算において資金不足比率が10%を超えたことにより、資金不足等解消計画を策定し、経営改善に取り組んできましたが、この計画の実行においても新型コロナの影響が及んでおります。今年度は、政府による様々な支援を受けたことにより、2月補正後の資金不足比率は、16.5%になると見込んでいるところですが、決算に向けてはさらなる改善に努めてまいります。また、来年度は15.2%になると想定しております。なお、新型コロナ感染症が収束した後の、患者の受療動向は不透明なため、収益改善のペースを予測することは中々困難であり、収支の回復には遅れが生ずることも見込まれますので、資金不足等解消計画については、計画期間の延長などの見直しを検討しているところです。

《質問》

(3) 新型コロナウイルス感染拡大に対する医療提供体制確保について        

 さて、今日の病院経営にとりまして、医師、看護師をはじめとして、各種技師等医療スタッフ確保が、極めて重要な課題であることは、言うまでもないところでございます。

 先月下旬、お預かりしているインターン生と一緒に、日本海総合病院を訪問する機会があり、この度のコロナ禍で初めてその存在を知ることになった「ECMO(エクモ)」を担当する病院内ではME(メディカル エンジニア)と呼ばれる「臨床工学技士」たちの過酷な現場を視察することができました。また、日本海総合病院におけるコロナ患者受入れ態勢について、物理的なゾーニングについても現場を見ることができました。コロナ禍で現場はまさに日々刻々と変化する状況にあって、昼夜を問わず全身全霊で取り組んでいることに、ただただ頭の下がる思いでございました。

 幸いにも日本海総合病院では、これまでコロナ感染者へのエクモの使用はないとお聞きしましたが、使用の際は、医師2名、看護師2名、ME2名で対応することになっているとのことでした。

また、医師、看護師と共に、患者の命と向き合う臨床工学技士の方々の給料が、他の医療職に適用されているような調整額の対象になっていないとお聞きしたところであり、医療スタッフの確保には、処遇改善も必要と思ったところです。このように新型コロナウイルス感染症拡大後に、県立病院におきましても、コロナ感染者に対応するため、医師、看護師、各種技師等医療スタッフの体制に大きな影響を受けたものと思いますが、病床の休止などを含めて具体的にどのように職員配置を調整し、医療提供体制を確保してきたのかお伺いいたします。

《答弁:病院事業管理者》

 病院事業局として医療提供体制の確保には積極的に取り組んできたところです。

 中央病院は、新型コロナ感染患者を県内で最も多く受け入れており、新型コロナ感染患者専用の病棟を設けるなどして専用病床を確保したほか、急性期の重篤な患者を治療するためのICUにも多くの新型コロナの重症患者を受け入れてきました。これら新型コロナ感染患者の治療に当たっては、多くの医療スタッフの配置が必要となります。中央病院は高度急性期医療を担っており、通常、一般病床では入院患者7人を1人の看護師が受け持ち、ICUでは入院患者2人を1人の看護師が受け持つ手厚い体制としているところ、新型コロナの重症患者の場合は、更に多くの看護師が必要であり、入院患者1人を1人の看護師が受け持つことになります。感染が再拡大した12月にはコロナ専用病床の利用率が90%を超え病床がひっ迫しましたので、専用病棟を2つに増やし、コロナ専用病床数を39床から45床に増床して対応することとしました。一方で3つの病棟及び高度治療を行うHCUでの休床など、最大時で56床を休床して新型コロナ対応に必要な体制を確保してきました。即ち、休止する部分で生み出された人員を、機能を強化する部分へ振り向けることにより、新型コロナ対応に必要な看護師の体制を確保してきたところです。

 また、県立病院間の連携として、中央病院でECMO(体外式膜型人工肺)を担当する臨床工学技士が不足したことから、一定期間新庄病院から1名を派遣して体制を確保しました。新庄病院では、1つの病棟をゾーニングし、26床を休床することにより、コロナ専用病床を7床設けるとともに担当する看護師を確保したところであります。

 このように各病院で様々な工夫をし、病床や人員の配置調整を行うことにより新型コロナ感染患者を受け入れてまいりましたが、今後も保有する医療資源を十分に活用しながら、県民の命を守るために必要な医療提供体制を確保してまいります。

《質問》

(4) コロナ対応による県が運営に参画する病院の経営状況について

次に、県が運営に参画する病院の経営状況についてお伺いいたします。

 独立行政法人日本海総合病院、公立置賜総合病院につきましても、県立病院同様に、新型コロナウイルス感染症患者受入れによる影響は、どのような状況であったのか。また、その影響により今年度の経営はコロナ禍以前と比較してどのような変化が想定されるのか、健康福祉部長にお伺いいたします。

《答弁:健康福祉部長》

 地元の市町と共に、県が設立・構成団体の一員として運営に参画する病院には、日本海総合病院と公立置賜総合病院がございます。両病院につきましては、昨年3月31日に本県初となる新型コロナの感染が確認されて以降、県立中央病院や県立新庄病院と同様、感染症指定医療機関として新型コロナの感染患者を積極的に受け入れていただき、診療にあたってきたところです。

両病院の新型コロナ対応による経営への影響につきましては、他の県立病院と同様、昨年の4月~6月期は入院・外来患者数が大幅に減少し、医業収支は前年度に比較して大きく落ち込み、先行きが見通せない状況でありました。このため、県立病院に加えて両病院に対し、新型コロナ患者の受入れに係る空床補償や感染防止のための設備整備に係る支援に加え、経営の安定化を図るための支援策に取り組んだところです。 

 その後、昨年の夏頃に、県内において新型コロナの感染が一旦落ち着いたこともあり、また両病院において徹底した感染防止対策に取り組んだことから、秋以降、ようやく通常の診療ペースに戻り、患者数が回復傾向となりました。さらに空床補償をはじめとして政府による支援策が拡充されるとともに、両病院とも経費節減などの経営努力が効果を上げ、昨年度の経常利益と比較しても、病院運営に支障のない程度まで経営が改善してきていると伺っております。

 県といたしましては、県立病院と同様、両病院において、引き続き、新型コロナから県民の命を守るため、感染症指定医療機関としての役割を果たすとともに、関係する市町とも連携しながら、庄内及び置賜地域の基幹病院として求められる救命救急や高度・専門医療の機能が持続的に確保できるようにという観点に立って、両病院の経営状況を注視してまいります。

《質問》

 (5) 県が運営に参画する病院への支援について

 先ほど県立病院についてもお伺い申し上げましたが、新型コロナウイルス感染症対応により、経営が困難な状況にある場合、本県独自の支援策を講ずる予定でありましたので、県が出資又は負担する2つの病院はいずれも改善傾向にあるということについては、コロナ禍においての並々ならぬ経営努力であろうと拝察し賛辞を贈りたいと存じます。一方で、当該病院における国の空床補償はどの程度の規模になる見込みなのか、現時点における試算について、健康福祉部長にお伺いいたします。

《答弁:健康福祉部長》

 新型コロナ患者を受け入れていただいている病院を重点医療機関として、8病院に対応いただいておりますが、これらの病院では、他の入院患者への影響がないよう、病棟全体を感染制御の区画(レッドゾーン)として新型コロナ患者のために確保して、一般患者が利用できないようにし、更に、1人1室を基本に病床を確保していただいております。そのため、新型コロナ患者が入院していない期間は、病棟全体の医業収益が見込めないことや、4床室を1人で利用する場合も、3床は利用しないこととなり、その分の医業収益が見込めないため、こうした医業収益が見込めなくなった病床に対して空床補償を行うことにより経営支援を行っております。

 空床補償については、4~11月分を既に支払っておりますが、9月に重点医療機関に対する空床補償単価について、4月に遡って増額されるという見直しが行われたことから、4~11月分では、これから増額して追加支出する分を含めますと、日本海総合病院で約5億5千5百万円、公立置賜総合病院では約5億2千8百万円となっております。12月以降の分についても、これまで同様、実績に応じて支払うこととしております。

《石黒覚所感》

 新型コロナウイルス感染症が、今を生きる私たちに何を教訓として、残そうとしているのか。終息に至らない現時点において、述べることはいささか尚早過ぎるかもしれませんが、先日、紹介いただいた「自治と分権」という季刊誌に掲載されました「全国公私病院連盟会長 邉見公雄医学博士」の投稿が、医療について何らの知識も持たない私でも感銘を受けたもので、少しご紹介させて頂きたいと存じます。

 「コロナ後の地域医療はどうあるべきか~自治体病院は命を守る最後の砦」というタイトルでした。邉見先生は、京都大学医学部を卒業され、京都大学付属病院、京都逓信病院などを経て、赤穂市民病院院長として地域と一体となった医療に尽くされている先生です。

 邉見先生は、新自由主義の中で行政効率のみを追求する我が国の医療制度のあり方を、憂いておられる立場からご発言されています。詳細については申し上げる時間はございませんが、先生が感銘した神戸市立医療センター中央市民病院木原院長の言葉を紹介しています。

 『彼女(グレタ テゥーンベル)を突き動かす絶対的な確信は、  17歳の彼女をして国連での演説を可能にし、トランプの侮辱にもプーチンの執拗な攻撃にも怯むことをさせない。しかしその彼女も、世界中全ての人の無知と嘲りを自覚した時、哭いた。グレタの涙をみた天主は、美しい地球を我が物顔で破壊し、富を貪り、万物との共生を顧みなくなった人類を冷たい雨に打たせることにした(中略)人類が本当に自分たちの過ちを顧みる日まで、この驟雨は繰り返し私たちを襲うこととなる。神は容赦なく何度でも私たちを打ち払う。その思いは心底私を畏れさせる』と書かれた木原先生の感性に、邉見先生もまさに同調されると記されています。私たちは、コロナによって、たった1年であまりにも多くの変わらざるを得ない社会的基盤を自覚することになりました。コロナ後の県民生活が一歩でも明るい未来へ進むための議論を深めることを肝に銘じて、次に進みたいと思います。

3 東日本大震災から10年、本県の防災施策展開の進捗について

《質問》

 (1) 県の地域防災計画について

 次に、東日本大震災から10年、本県の防災施策展開の進捗について、お伺いいたします。 2011年3月11日14時46分、千年に一度と言われた東日本大震災発災から、明後日10日で丸10年になります。

 2021年3月1日時点で、死者は1万9,729人、重軽傷者は6,233人、警察に届出があった行方不明者は、2,527人と発表されています。最近テレビに映し出される津波や火災、原発事故の映像に涙があふれてくるのを抑えきれない日が続きます。さらに、10年たった今も避難生活が続く被災者の方々が、今年2月8日現在41,241人、本県に1,563人おられることを思うと、言葉に表せない思いがこみあげてきます。

 しかしながら一方で、復旧、復興道半ばにありながらも、懸命に前に進む被災地の人々の姿に、逆に勇気をもらうこの頃です。私たちは、10年前におきたあの大震災を忘れることなく、神様が与えてくれた大きな教訓として、次の時代を生き抜く糧にしていかなければなりません。そこでまず、東日本大震災における津波による災害などの教訓について、県の地域防災計画にどのように活かされているか、防災くらし安心部長にお伺いいたします。

《答弁:防災くらし安心部長》

 本県の地域防災計画は、東日本大震災における課題などをもとに平成23年(平成24年3月)に全面改定を行っており、その後も随時改定を行っております。

 東日本大震災を契機とした主な改定内容としましては、1点目は、地域防災計画の前提となる「被害想定」を見直しております。地震については、県内の断層帯を震源域とする地震のうち考えられる最大規模、マグニチュード7.8の地震を前提として、また津波については、山形県西方(せいほう)沖を震源域とするマグニチュード7.8の地震による津波を前提として、それぞれ災害発生時の被害想定を設定しております。

 2点目は、地域防災計画に「津波災害対策編」を設け、事前の「予防計画」や災害発生時「応急計画」、その後の「復旧計画」を明記し、津波災害対策の充実を図っております。「予防計画」では、津波に関する防災知識の普及や、短時間での避難に必要となる避難場所・津波避難ビル・避難路の整備など津波に強いまちづくりの推進方針等を定め、「応急計画」では、あらゆる手段を活用して津波警報等を迅速かつ正確に伝達することや、住民等の自主的な避難、また安全な避難を確保するための行政の活動などを定めております。

 3点目は、福島第一原子力発電所事故による被害を踏まえ、新たに「原子力災害対策計画」を定めております。「予防計画」では、放射線などに関する正しい知識の普及、空間放射線や食品中の放射性物質のモニタリングを実施することなどを定め、「応急計画」では、災害発生時における屋内退避の手順や他県からの広域避難者の受入れなどについて定めております。そのほか、東日本大震災では、高齢者など避難に際して支援が必要な方への支援の在り方等が課題となったことから、市町村による避難行動要支援者の名簿の作成・活用についても県の地域防災計画に明記し、市町村の取組みを支援、促進してきております。

 県としましては、引き続き、東日本大震災の教訓を今後の防災対策にしっかりと活かしてまいりたいと考えております。

《質問》

 (2) コロナ禍における避難所運営について 

 次に、コロナ禍における避難所運営対策や備品調達状況など、少し具体的な点について現状をお伺いいたしたいと思います。

 去る2月13日23時8分頃、東日本大震災の余震であろうと報告された、宮城県、福島県で震度6強の大きな地震が発生しました。被災地の皆様方は、10年前の記憶がよみがえって、どんなにか怖い思いをされたかと、心が痛みます。その時のテレビ映像には、10年前とはまるで違った避難所の様子が映っていました。簡易テントや段ボール間仕切りで仕切られた密集を避け、プライバシーを保つなどに配慮されているものでした。様々な分野における知恵の結集と努力による進化に敬意を表した次第です。

 さて、本県における避難所設置主体の市町村において、そうした対応はどのような状況になっているのか、防災くらし安心部長にお伺いいたしたいと思います。

《答弁:防災くらし安心部長》

 コロナ禍における避難所運営においては、良好な生活環境としてのプライバシーの確保に加えて、3密を避けるなど新型コロナ感染防止対策が求められているところです。

 このため、県では、昨年5月に「山形県避難所における新型コロナウイルス感染予防ガイドライン」を作成し、市町村に対し、避難所におけるマスクの着用やこまめな手洗いなど基本的な感染防止対策の徹底や、密集回避やプライバシー確保のためのパーティション(間仕切り)や簡易テントの活用、感染防止等に必要な資機材の確保などを促してきているところです。今年2月1日時点の県内の市町村におけるパーティションや簡易テントの備蓄状況を見ますと、パーティションは、県が今年度臨時的に支援したものも含め全市町村で約7,400枚、簡易テントは19市町村で1,472張、確保されております。このほか、災害発生時には、市町村では民間事業者との災害時応援協定に基づき必要なパーティション等を調達することとしているほか、県としても市町村の資機材調達を支援することとしております。

《質問》

 (3) 津波災害対策について

 次に、本県の津波災害対策についてお伺いいたします。

 2011年12月14日「津波防災地域づくりに関する法律」が公布されて以来、県においては同年度内に、法律に基づかない暫定的な津波浸水予想図の作成から、2014年には国から日本海側における統一的な津波断層モデルが公表され、翌年県において法律に基づく津波浸水想定の設定、公表が行われました。さらに翌年2016年、県は新たな津波シミュレーションCGなど作成配布を行い、市町は新たな津波ハザードマップの作成・配布、津波避難経路、津波誘導案内標識設置などを進めております。また、法律の示すところに従い「津波災害警戒区域(イエローゾーン)」の指定にも取り組んできたものと認識いたしておりますが、県のイエローゾーン指定を受けた市町のハザードマップ改定等の進捗について、どのようになっているでしょうか。

 併せて当時、県内各市町や他の都道府県の市町村のハザードマップ作成における色使いについて、国土交通省の指導が行き届かず、ばらばらなものになっていることから、他市町や他県に行った際に戸惑うとの指摘を受け、本県から統一の必要性を訴えることをご提案いたしておりましたが、現状どのようになっているでしょうか。

 また、東日本大震災直後には、津波による大災害が及ぶと考えられるいくつかの福祉施設等から、高台など安全な場所への移転に対して、国や県の支援を求める要望があったと記憶いたしておりますが、民間福祉施設等への支援は中々進まない状況であると考えます。しかしながら、こうした施設でもより安全に命が守られる対策が必要であることは言うまでもないところでございますが、津波ハザードマップに示される危険な場所にある、公共施設や民間福祉施設等の対策について現状はどのような対応がなされているのか、防災くらし安心部長にお伺いいたしておきたいと思います。

《答弁:防災くらし安心部長》

 津波防災地域づくりに関する法律では、津波が発生した際に被害が生じる恐れがあり避難体制を特に整備すべき区域を、県が津波災害警戒区域(いわゆるイエローゾーン)として指定することとされております。この指定を受けた市町村では、警戒区域内の避難体制を整備するため、津波ハザードマップの作成や警戒区域内の学校、病院、社会福祉施設等を避難促進施設として指定し、これらの施設では、施設利用者が円滑かつ迅速に避難できるよう、避難確保計画を作成するとともにこの計画に基づき避難訓練を実施することとされております。

 これに基づき、本県では、令和2年3月までに日本海沿岸の2市1町における津波災害警戒区域を指定しております。2市1町における津波ハザードマップの改定状況ですが、遊佐町では令和2年3月に、酒田市では本年3月に改定されたところです。鶴岡市では、来年度改定の予定とお聞きしております。津波ハザードマップの配色については、国土交通省が平成28年5月に策定した「水害ハザードマップ作成の手引き」に従い配色を統一していただくよう、2市1町に対し、必要なデータを県から提供しながら要請してまいりました。酒田市、遊佐町では、この度の津波ハザードマップの改定に合わせて、国土交通省の手引きに準じた配色に統一しております。今後改定予定の鶴岡市においても、同様に作成していただくよう改めて要請してまいりたいと考えております。避難促進施設に指定された施設は、2市1町あわせて22施設となっており、このうち19施設では、市町の支援を受けて既に避難確保計画が作成されておりますが、今年度の津波避難訓練の実施は、計画作成後間もないこともあり、1施設(吹浦保育園)のみとなっております。

 県としましては、法律上、避難促進施設に対して必要な助言・勧告を行うことができるとされている2市1町に対し、全ての避難促進施設において避難確保計画が早期に作成され、計画に基づく津波避難訓練が確実に実施されるよう、働きかけてまいりたいと考えております。

《質問》

 (4) 建築物の耐震化の状況について 

 次に、建築物の耐震化の状況について、お伺いいたしたいと思います。

 我が国においては、阪神淡路大震災以降、建築物をはじめとする構造物の耐震化に関しては、飛躍的に進化してきた印象があるように思いますが、実は本当に耐震化は順調に進んでいるのか、いささか疑問に思うところがございます。本県においては、建築物の耐震改修の促進に関する法律に基づき、耐震改修促進計画を定め、建築物の耐震化を進めてこられたかと思います。しかし、耐震改修工事には多額の費用を要するため、特に個人が所有する住宅の耐震化が十分に進むのか、高齢化が今後も進むことを踏まえると少し心配になるところでございます。令和元年6月には山形県沖地震、そして今年2月に福島県沖地震が発生し、将来も大規模な地震の発生が想定されます。

 本県における建築物の耐震化、とりわけ住宅の耐震化の現状と今後の方向性について、県土整備部長にお伺いいたします。

《答弁:県土整備部長》

 建築物の耐震化については、建築物の耐震改修の促進に関する法律に基づき策定した耐震改修促進計画により進めています。この計画は、より実効性が上がるよう、現在見直し作業を行っております。委員からお尋ねのありました、住宅の耐震化について、今後の方向性を踏まえてお答えいたします。
 はじめに、住宅の耐震化の現状認識についてです。住宅の耐震化率は、平成30年度で83パーセントでした。計画を策定した平成17年度と比較しますと、住宅の耐震化率は14ポイント向上しています。現行の計画では住宅の耐震化率の目標を「令和2年度までに95パーセント」と定めております。しかし、目標には達しない見込みでありますので、引き続き対策を進める必要があります。
 住宅の現状を申し上げますと、県内には耐震性が不足する住宅が約6万5千戸残っています。このうち6割の世帯では65歳以上の方が家計を支えています。住宅の耐震化の工事費は200万円を超えることも多く、世帯が高齢化するほど経済的負担はより重くなっていきます。このため、高齢化の影響を受け、住宅の耐震化の進捗は、今後、進みにくくなることが見込まれます。
 次に、住宅の耐震化の今後の方向性についてです。経済的負担が重いために、住宅の耐震化工事を行えない県民の命をどのように守っていくのかが課題となります。仮に住宅そのものが大きな被害を受けたとしても、そこに住んでいる県民の命を守る対策を取り入れていくことが今後の方向性です。
 具体の対策例を2つ申し上げます。一つ目は「耐震ベッド」の設置です。二つ目は、居間や寝室といった普段生活する部屋に限定した住宅の補強工事です。これらの対策はいずれも、住宅全体を耐震化する場合に比べて、費用を抑えつつ、人的被害を軽減する効果が期待できるものです。